内容説明
2000年代初頭、人間の全遺伝情報=ヒトゲノムがついに解読された。その後まもなく、山中伸弥らがiPS細胞(人工多能性幹細胞)の作製に成功。そして今、ジェニファー・ダウドナらが開発した新技術「CRISPR-Cas9」により、人類は「ゲノム編集」の時代を迎えている。自らの設計図を望み通りに書き換えられるようになったとき、人間の条件はどう変わるのか? 科学と倫理のせめぎ合いを圧倒的なストーリーテリングで描く傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
lily
86
世界が大きく変わるとしたら、きっかけは遺伝子操作かもしれない。大抵のことは受け入れられるし、殆どどうでもいいことで溢れているけれど、自分が自分でなくなる世界が最も恐ろしい。2021/04/02
tom
20
遺伝子に対して、どんな操作も可能になったのが今の時代。とりあえずは、難病治療に向けられた研究は、人類の改造に向かおうとする。この是非について、本書の後半は語られる。たしかに、みんなが良い人になった世界は、恐ろしそう。たぶん、そんな世界は退屈極まりない。でも、個々人を取り上げたら、いい人でありたいと思うのも仕方ない。さてどこで手を打つのか。答えは出そうにない。ということを書いている本だと思う。遺伝子研究に進歩を見ていると、10年後に何が起きているのか分からない。怖いなあとは思うけれど、見てみたくもある。2021/06/26
塩崎ツトム
13
急速に進歩する遺伝子組み換え技術、エピジェネティック、遺伝子治療、ゲノム編集。自己の境界が、アイデンティティの境界が、急速に薄れていく。選択することが実存の核だが、生まれる前の遺伝子改変に対して、個人は何を選べと? ポストヒューマンは親を選べぬ呪縛のほかに、編集される遺伝子を選べぬ呪縛まで背負うのか……。2021/06/16
Hiroshi
7
下巻は④~⑥。④遺伝性疾患には、血友病や鎌状赤血球症のように一個の遺伝子の異常を原因とする単一遺伝子疾患と、複数の遺伝子の異常を原因とする多因子疾患がある。更に遺伝性疾患には不完全浸透の問題がある。遺伝子異常がゲノム上に存在していても、疾患が必ず発生するとは限らないのだ。そもそも遺伝学では、変異型の対義語は正常型ではなく野生型だ。統計学的な概念なのだ。変異は多様性なのだ。また遺伝性疾患を知るためには遺伝子地図を作らなくてはならない。正常な遺伝子を知る必要も。ヒトゲノム計画によりヒトゲノム全部が解読された。2022/01/25
maimai
7
遺伝子研究の進展はやがて人類自身の人間観の大きな変容を迫るに違いない。下巻はヒトゲノムの解読から遺伝子操作、ゲノム編集へと話題が広がる。今我々人類は、発生以来最大の転換の時を迎えているかもしれないという感慨に浸りつつ読んだ。ほぼ知識の範囲内の内容が中心だった上巻に比べ、下巻は読むのにたいそう時間がかかった。2021/12/10