内容説明
『源氏物語』は誕生直後、奉呈本作成の一大プロジェクトが挙行、その過程で原作本は失われた。だが人々が写本を作り続けたために、物語本文は今に伝えられている。その中で、なぜ定家の「青表紙本」が決定版となったのか。物語を伝えた人々の姿を照らし出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
64
源氏物語は書かれてから写本に写本を重ねられ、約200年後に藤原定家が本文を定めたとされてきた。しかし実際はそんな単純な話ではなく、よりふさわしい表現を求めて削除や変更を続けた本文はもはや定家の創作に近いとは。その定家本にも江戸期を通じて手が加えられ流布した末に、大島本として佐渡で世に出た事実には驚かされた。日本人の血肉となってきたとされる源氏物語だが、時代と立場により全く異なる本を読み継いできたのか。定家本と河内本の対立、池田亀鑑の研究のいい加減さなど源氏が生んだ悲喜劇が小説よりも面白い歴史と化している。2021/04/23
gorgeanalogue
16
「源氏物語」が、平安末から中世を通じて和歌、絵巻、果ては教養書・教訓書などとして、日本文化の一大基調となったことをさまざまに述べる前半はとても面白い。江戸の往来物などの上段にしばしば源氏が引いてあるのも腑に落ちた。しかし当然のこと、それは誤記や錯簡の多い写本行為を通じてであった。で、後半は校閲写本の問題点と消長に話題が移るのだが、「大島本」、ひいては池田亀鑑説の問題点など、面白いところは多かったが、全体的にも行論が独特で読みにくいのは否めない。俊成の「桐壺」巻の見せけちについての言い訳には笑った。2022/06/21
はちめ
10
結構衝撃の内容だった。紫式部の自筆本は当然失われているので、現在出版されている源氏物語は定家が原本に近いと評価していた青表紙本というものを使っていることは知っていたが、その内容は相当定家による筆が入ったものであったらしい。源氏物語かくあるべしと説明的な部分を削除したものだとみられている。なおかつ、現在多くの出版物の原本となっているものは、大島本と言われているが、多くの人により加筆修正がされ、青表紙本とはとてもいいがたいとのこと。廃れた系列に河内本というのもあるが青表紙本とは印象が異なるとのこと。☆☆☆☆☆2022/09/21
chisarunn
7
王朝文化華やかなりし頃、もちろん活版印刷もコピーもないので物語は人の手で書き写すしかなかった。当然、うっかりミスや意図的な改変なんかもあったりしてその結果、現代に伝わる古典文学には膨大な異同がある。それを「人がつなぐ」と美しくタイトルした本である。源氏物語にも青表本とか大島本とかさまざまな系統があるのは知っていたが、現代のテキストに採用されるような大きな流れに集約されるに当たって、こんなにもドラマチックな背景があるとは知らなかった。これからは"注"の「○○本には××とあり」というのも意識して読もう。2023/10/07
なおこっか
5
定家筆の若紫巻が発見された時は衝撃だった。今まだ見つかるのか!という嬉しい驚き。本書は紫式部存命の時代から、写本という手順で伝わってきた物語の変遷を丁寧に辿る。そも紫式部自身の手元に源氏は三部あった模様(一部は道長が盗っていった)だが、著者本人が過去に書いたものを読むと改善したくなるので、この時点で表現が異なるものが存在したかもしれない、と。定家時代になると写本により文章は様々、しかも時代が異なるので、漢字と句読点を加えないと読む事も難しい。定家は歌詠みの立場から読解した文を綴ったが、根拠ははっきりせず。2023/12/07
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