核の誘惑 - 戦前日本の科学文化と「原子力ユートピア」の出現

個数:1
紙書籍版価格
¥4,180
  • 電子書籍

核の誘惑 - 戦前日本の科学文化と「原子力ユートピア」の出現

  • 著者名:中尾麻伊香
  • 価格 ¥4,180(本体¥3,800)
  • 勁草書房(2021/02発売)
  • ポイント 38pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784326602803

ファイル: /

内容説明

戦前日本のメディアにおける核に関する言説と表象を検討し、日本人の核に対する意識をその源流から辿り直す。科学技術による帝国日本の覇権、科学技術の進歩がもたらすはずの明るい未来像=「原子力ユートピア」はどのように形成され、そして戦後「原子力の平和利用による復興」に引き継がれていったか。膨大な資料から描き出す。

目次

序章 核の誘い

I 放射能の探求と放射能文化の創生

第一章 放射能と科学者、メディア
 第一節 X線、ラジウムの魅惑
 第二節 「原子エネルギー」の解放をめぐる予言
 第三節 日本のX線、ラジウムをめぐる報道
 第四節 メディアに登場する科学者

第二章 放射能を愉しむ:大正期のラジウムブーム
 第一節 ラジウム療法
 第二節 ラジウム温泉ブーム
 第三節 モダン文化の中のラジウム
 第四節 ラジウムの光と影

第三章 帝国の原子爆弾とカタストロフィーをめぐる想像力
 第一節 最終兵器としての放射能
 第二節 第一次世界大戦と「原子爆弾」
 第三節 原子爆弾と関東大震災

II 原子核の破壊と原子力ユートピアの出現

第四章 新しい錬金術:元素変換の夢を実現する
 第一節 長岡半太郎の錬金術
 第二節 原子破壊工業への期待
 第三節 サイクロトロンと人工ラジウムの夢

第五章 秘匿される科学:核分裂発見から原爆研究まで
 第一節 核分裂発見のインパクト
 第二節 日本メディアの核分裂への反応
 第三節 原爆研究への着手
 第四節 科学動員と仁科

第六章 戦時下のファンタジー:決戦兵器の待望
 第一節 最終兵器への期待の高まり
 第二節 戦時下の仁科:科学「振興」と「動員」のはざまで
 第三節 戦時下の海野:科学小説時代
 第四節 原爆待望論

第七章 原子爆弾の出現
 第一節 原爆投下のインパクト
 第二節 原子力を抱擁する
 第三節 原子力時代を描く

終章 核の神話を解体する


あとがき
主要参考文献
人名索引
事項索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

バーニング

4
博士論文をもとにした著作、と言うことを意識せずとも非常に意欲的な一冊。科学史研究を行う中で期せずして起きた3.11とそれにまつわる様々な言説は中尾自身に迷いを与えたとあとがきに記されているが、そうした迷いの中で産みだされたのがこの大著だとするならば、現代的な意義は非常に大きい。また、中国や北、あるいはトランプのアメリカなど、まさに核の「誘惑」は常に身近にある以上、私たちの世界はまだまだ科学の歴史の途上にあるのだと本書を読む中で強く感じた。 https://medium.com/p/23ee2edf63c22018/10/03

inenoha

1
戦前・戦中の日本における,原子・原子核・放射能・放射線・放射性物質・核分裂・核エネルギー・原子爆弾に関する大衆のイメージを追った著作.テーマは戦後の原子力政策の背景を知る上できわめて重要だと言える.しかし,分析に用いる概念や、史料の基本的な解釈など,至るところに仕上げの粗い箇所が見られるのが残念.2015/09/08

Mealla0v0

0
核の言説・表象が、戦前どのようなものであったかを検討した労作。放射能がその初期から科学を超えて、オカルト・娯楽・文化といったものに浸透しながら「生命力」「光」「未来」といったイメージと結びついていたことが指摘される。他方、WWIを経たヨーロッパでは放射能は「最終兵器」として創造されるようになるが、それは世界を征服し統治する権能としてだった。戦争の季節は、その想像を期待に代えたが、ファンタジーに過ぎなかった。が、それは原発投下に結実する。その破局は、しかし原子力のイメージを変えなかった。あとがきに熱がある。2017/06/22

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/9763056
  • ご注意事項

最近チェックした商品