内容説明
三人の女性の緊迫した“心理劇”。
「あんたの中に、怒りの子が見える……人のうちに、潜んでる、外から見えんけど、何処かにいる、人の奥のほうに。」
自分自身のやりたいこと、望んでいることなどが定まらず、ビジネス学校に通いつつ悶々とした日々を送る主人公・美央子。美央子が姉のように慕う、どこか浮き世離れした雰囲気を持つ初子。そして美央子と同じアパートに住み、親しくするそぶりを見せながら、いちいち美央子の感情を逆撫でしていくますみ――。3人の感情は、初子の義弟・松男の存在を触媒として、大きく揺れ動いていく。
人間の心情を、平易な言葉を使いつつ、豊かな描写力で見事に描ききった、第37回読売文学賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
小川
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面白かった。言葉にしづらい感情を表現するのが(比喩)うまい作者さんだなと、『誘惑者』を読んでても思った。静かに読みたい本。2024/08/04
ジュリアン
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自選小説集収録版ですでに読んでいたが、Audible版がリリースされたのを機に、朗読を聴きながら和巳・たか子電子全集版の活字を目で追った。作者は講談社文芸文庫版刊行を機に20年ぶりに読み直して、「よく書けている」「ううんと唸った」と「著者より読者へ」で書いていた。私が読んだのは15年前。その当時は、「そうだろうか?」と首を傾げたのを今も覚えている。さて、15年後の再読である。私もまた「ううん。これこんなにも完成された作品だったのか」と唸ってしまった。2024/06/15