内容説明
親友の死は本当に心中だったのか。天皇機関説をめぐる華族と軍部の対立、急死したドイツ人ピアニストと心霊音楽協会、穢(けが)れた血の粛正をもくろむ「組織」(グルッペ)……。謎と疑惑と陰謀が、陸軍士官らの叛乱と絡み合い、スリリングに幻惑的に展開するミステリー。柴田錬三郎賞、毎日出版文化賞をダブル受賞、「週刊文春」「このミステリーがすごい」「ミステリが読みたい」ベスト10入り!〈解説〉加藤陽子
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kei
91
美しく流麗な設えの文章。華族、陸軍将校、雪ときて、二-二六事件。三島の憂国を思いおこす。しかし、物語は、清張のごとき列車ダイヤの謎を解きあかしつつ、彼の未完の天皇転覆説というもっと大きな謎を提示する。古事記の最初の神という血筋を軸足に、宮中、軍部、財閥、ナチスと絡み合い、あの時代の不穏を現す。フェムファタールの主人公とは対照的に、彼女の補佐役でもある健全な男女が、焦土となる日本を超える未来を暗示するのが救いである。人は時代という、儚い雪のごとき階に立っていて、そのひとずさりで世界は変わるかもしれないのだ。2021/03/16
rico
72
下巻は近づく幻の「昭和維新」の日に向けて加速。心中事件の背後には、薄闇の中にうごめく陰謀、権力をめぐる暗闘、そして狂気と妄執。「聖なる血」という概念は物語の中の虚構ではあるが、この国を後戻りのできない道に駆り立てた「万世一系」と相似形。千代子と蔵原の行動力と、囲碁や数学を得意とする惟佐子の冷静な思考が、真相に迫っていく鍵となっているのは象徴的。美しくはかない雪の階。それは進むべき道ではないと大声で言える人間がどれだけいるか。時代はこのように動いていくのだろう。昭和史の秘話を読んだような感覚。圧倒的でした。2023/03/03
みつ
43
下巻まで一気読み。複数人が死んで行く物語であるが、その謎解きは本筋にはなく、ナチス・ドイツの、いわばゲルマン民族純血主義と日本の「万世一系」の天皇制が対比されながら、宗教者を中心とした恐るべき構想が次第に明らかになってゆく。昭和11年の運命の大雪の日を迎える場面では、実際に起こった事件とどのように結びつくのかが興味の焦点だが、やや拍子抜けの感も。全体に忌まわしさが増す中、主人公の旧婚約者の喜劇的言動が好対照。前編から魅力的だった千代子たちの幸福感に満ちたやりとりでの結びは、氏の『グランド・ミステリー』的。2023/01/15
ゆきらぱ
40
物語の世界観を楽しめて満足です。惟佐子が自身は突飛な行動を取りながらもあまりに何にも動じないのが不思議ではありましたが。この不思議さをとにかく他人を圧倒させる美貌の持ち主という事で押し切られてしまったような気もする。二・二六事件と彼女がどう関係するのかが見どころ。2021/02/18
白いワンコ
31
天体は徐々に『鳥類学者のファンタジア』から離れ、奥泉テイストを感じさせるアイテムも薄められていく。奔放な筆致と世界観は終息に向け雪のように静かとなり、伏線の回収こそ明朗でないものの、着地点は思いのほか穏やかだ。『鳥類学者~』や『ビビビ・ビ・バップ』と比べ、本作はより広く評価されるべき、されたい作品なのだろうかと感じた。それにしても解説の加藤陽子東京大学教授は何故、天皇論ばかりに頁を割いたのだろうか。あって然るべきワードを欠き、一心にその方向へ突き進む様は、些か滑稽であった2021/03/21
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