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内容説明
日米を巻き込んだ「もうひとつの独仏戦争」
プロイセンがフランスを終始圧倒して勝利した普仏戦争の裏で、ビスマルクは米国にアプローチし、国際法に頼ろうとしていた――なぜか? ビスマルクによる米国との交渉、国際社会への訴えから、日本・中国での停戦工作までを地球規模で描く、知られざる近代史!
〈目次〉
第一章 普仏対立へ ――ルクセンブルクをめぐる戦争の危機
第二章 米国への打診
第三章 独仏開戦とフランス海軍への対応
第四章 北ドイツ沿岸の戦況
第五章 極東への影響
第六章 パリ宣言への幻滅とフランスへの反撃
終章 海からみたビスマルク外交
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
59
1870年の独仏戦争(著者はあえてこう書いている)時に、フランスに比べ弱小だったドイツ海軍のため、ビスマルクが様々な外交的駆け引きを使ってその不利な状況を何とかしようと悪戦苦闘する様子がよく分かった。先日読んだ本にビスマルクを独裁者に位置づけていたものがあったが、同僚との議論などを見ると、豪腕ではあるが独裁ではないと思う。ただ、当時のドイツのアジア通商についてもっと研究されていたら面白かったと思う。その意味で書名は少し大袈裟。テーマが絞り込まれていたので読みやすかったが、視点の広さは余り感じなかった。2021/02/07
パトラッシュ
57
ドイツ統一を成し遂げた鉄血宰相ビスマルクが、独仏(普仏)戦争の裏では先んじた大国たる英仏外交に痛めつけられていたとは。陸軍大国プロイセンも海軍力は弱く仏海軍に対抗できないのをアメリカを巻き込む外交で挽回しようと図るが、商船を保護するための国際法を英仏は平然と無視した。ビスマルクの怒りと無念を深く刻んだドイツが海軍力増強を推進し、第一次大戦で国際法を無視した無制限潜水艦作戦を実行する淵源かもしれない。この無念を直接ビスマルクから聞いた明治日本が軍事大国化を進めたとしたら、近代日本史をも左右したといえるのか。2021/03/02
MUNEKAZ
21
ドイツの完勝という印象の強い普仏戦争(著者は独仏戦争と呼称)を、「海」からの視点でとらえることで、新しい側面を見せてくれる。陸では負けなしでも、海では弱小のドイツ軍という現実を前に、ビスマルクが得意の外交で悪戦苦闘する様子は面白い。国際法を武器にフランス海軍の通商破壊戦を止めようと目論むも、海軍大国イギリスは動かず、列強諸国も冷ややかな反応といいところは無し。後年、鉄血宰相が岩倉使節団に語った「強国は自国に有利な時だけ国際法を使い、それ以外は武力に頼る」の真意が、奈辺にあったのかがよくわかるところである。2021/02/09
nagoyan
20
優。中公新書「ビスマルク」の著者。凄く面白い。一気に読んだ。普仏戦争に至る経緯も面白いが、戦争が近づく中でビスマルクは米に接近する。一つは軍艦の取得先として。もう一つはパリ宣言の強化(商船の保護)の協調相手として。ナポレオン三世の第二帝政下のフランスとの海軍力は8対1ともいう劣勢さ。ビスマルクはなんとか国際法と外交努力で仏海軍から自国商船隊を守ろうとする。清で起きた教案事件もあり極東現地では中立化構想も生まれるが仏本国は拒否。中立維持に不熱心な英の非協力もあり、ビスマルクは次第に国際法に背を向ける。2021/01/27
ピオリーヌ
19
独仏戦争(一般的には普仏戦争の表記が多いが、著者は実情を的確に反映する言葉として独仏戦争という)といえば陸戦でドイツが圧倒した戦争という認識だったが、本書ではフランス海軍に比し、明らかに劣勢であったドイツ海軍を抱え、ドイツ商船を守る為に奮闘するビスマルクの姿が描かれる。軍艦の調達の為米国に接近、またパリ協定という国際法に依りながら国益の為に奮闘するビスマルク像が新鮮。同時に極東地域では天津教案も発生。これを受け、同地では西欧諸国の利益を守る観点から、独仏の融和さえ2022/02/02
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- 和書
- 鳥居元忠