内容説明
疫病に街がすっぽりと覆われてしまう前、店内を眺めた。専門店にあったはずの工芸品も本も服もみな雑貨になった。物と雑貨の壁は壊れ、自分が何を売っているのか、いよいよわからなくなっていく。これからどうしたら物の真贋の判断を手放さずに済むだろうか。広範な知識と経験を交えて雑貨化の過去と現在地を探る画期的な論考。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Koichiro Minematsu
39
雑貨は魅力があるし、魔力もある。 雑貨屋さんに行ってみる!2021/10/30
おさむ
30
西荻窪の雑貨店主のエッセイ集。私よりも10歳近く若いが、文章は老成(良い意味で)していて、過去の心象風景やエピソードへの飛びっぷりが巧みで、向田邦子や須賀敦子を彷彿させた。無印良品について書いた「印の無い印」が秀逸。合理性、モノトーン、そして消費社会へのアンチテーゼ‥‥無印は好きで私も愛用しているが、いつのまにか無印というブランドを崇めている事に気づく。そのジレンマをうまく言語化している。「かわいく雑貨的な」村上春樹さんの書斎の様子から始まる「2人の村上」も見事な雑貨論。思わずお店を訪ねたくなりました。2020/11/28
Tenouji
15
『すべての雑貨』第二弾!ということで読んでみた。こんなに暗いトーンでしたっけ?という始まりだが、相変わらずの掴みどころのない感じw。最近読んだ『大阪』や『下山の哲学』の読後感と、なぜか似ていたりもする。著者は、ディズニーランドについて触れているが、現実は更に先をいっていて、バーチャルであるゲーム内世界も雑貨的になっており、『あつ森』は、ある意味、非常に『すべては雑貨』的であり、非常に完成されたものであると感じますね。2021/02/23
チェアー
11
雑貨という言葉のなかった時代、人とものはもっと密接な関係だった。人はものに込められた思いや歴史を尊重し、ものをものとして使ってきた。 だが、雑貨という言葉でくくられた瞬間、歴史は蒸発し、作る、使う思いは客体化し、外見や他のものとしっくりくるかというバランスの中でしか評価されなくなった。 そして、私達はその雑貨を消費している。すべてを雑貨のように考えて。 気がつくと、他人をも雑貨として見ているのではないか。2020/10/21
kuukazoo
8
無印良品のことを書いた章に出てくるアイリッシュ音楽の演奏家が自分のやっている音楽を「無印良品みたい」と言われ自分でもそんな気がしてしまうことが辛いと語るくだり。また個人経営のパン屋に擬態したチェーン店の「完成され過ぎたほっこり」とか、老舗っぽい日本料理店にいる「実母という設定のコンセプチュアルなパートのおばあさん」とか、すっかりマーケティング戦略に取り込まれている消費生活。雑貨的なモノの化けの皮を剥ぎながら雑貨店主はどこへ行くのだろうと思った。2021/10/25