内容説明
「皆さん。こんなおかしな小説はありはしません。信じて下さい」2036年の日本。「練られた筋書きだの、生活の機微を活写した虚構だの、人間のありようを深く追求するだの、そんなことの一切が嘘八百だということを、わたしは平易な随筆でもってあきらかに示したい。それが敗戦国の人間の、当然の責務だと考えるからであります」獄中で書いた随筆は、政府が発布した「小説禁止令」を礼讃する内容になるはずだった。しかし、当局がそこに見つけたのは、あるはずのない作品名だった……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はっせー
41
本書のジャンルはディストピア小説。怖い描写があるというより主人公が置かれた環境や社会などが生々しい。舞台は近未来。主人公は牢獄の中に入っており月1回雑誌を刊行している。当然検閲付。そのため時折黒塗りで隠されている言葉や文章が出てくる。そんは雑誌では小説禁止令に賛同している主人公がなぜ小説禁止令に賛同しているのか。小説のどこがダメなのかを論じている。思うことは小説とエッセイの違いの難しさ。本書では小説の悪い部分を書きながらエッセイなどの話も展開される。改めて小説ってなんだろうと思った小説はいままでになかった2025/04/29
踊る猫
38
安直な読みの謗りを免れえないだろうが、パフォーマーとして活躍してきた来歴を持つ著者だけあってその優秀な脳のみならずそれこそ五感から全身全霊を総動員して外部を体得し、そこから「小説(およびそれを禁止すること)」までをも考察の俎上に載せるその手つきに背筋が凍る緊張感を抱く。それはしかし、ありがちな「随筆(あるいは小説)の名を借りた批評」という行儀の良い体裁におさまるものではなく、著者自身をも狂わせていく方向へと転がっていき、したがって安易に「これは反小説という名の小説だ(にすぎない)」と言わせない厚みをも持つ2025/01/12
まると
14
「日本」や「安全」などの文字が伏せ字となっていて、カタカタ文字も一切なし。獄中記のスタイルで、小説の型式を語りつつ、少しずつ時代設定が明らかにされていく。ただ、最後は夢のような幻覚的な文章(意図的に気が触れたようにしたのか?)が続いて、何が何だかわからないまま、終わってしまった。それこそが作者の意図なのかもしれないけれど、温又柔さんの解説も理解の助けにはならず。読解できた方に本当の解説を願いたい。2020/12/19
なつみかん
11
これはどう読めばよかったのだろう?なにを予備知識に持っていれば入ってくるのだろう?分かりませんでした。2020/12/19
ひでお
7
近未来小説の体裁をとっていますが、非常に細部まで拘って考えられた作品だと思います。まず、著者の分身のように思える語り手による小説論。小説を否定している文章になっていながら、小説の可能性を論じる小説論になっています。もうひとつが現代にも忍び寄っているような言論統制や地域の分断に対する強い抗議です。多数に反する意見を許容しない世の中にならないことを切に願います。2022/03/17
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