内容説明
図らずも全国政権に押し上げられたために滅亡した鎌倉幕府。室町幕府は前代の失敗に鑑み将軍権力を活用し、「朝廷を自由に動かすこと」に努めた。尊氏・直義の幕府創成期と三代義満時代の細川頼之を中心に、将軍権力の変遷を読み解く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
onasu
17
冒頭から、足利の新政権は本拠地を京都と鎌倉のどちらにするか、決めかねていたというのがおもしろい。 後醍醐天皇は三種の神器を抱えて逃げてしまった訳で、尊氏はどう政権を打ち立てればいいか、前例も確たる考えもないのだから、何事も決められない。そこで、鎌倉はどうだったかから綴られていくのだが、これがまたユニークで参考にならない。そんなんで、「太平記」にある政争が描かれていく。 本筋もおもしろいが、初章の北条家の代々は明晰だが短命で、主を虚ろにした故に陰惨な騒動を繰り返していたというのも記憶に残った。2021/01/29
nishiyan
16
鎌倉幕府が抱えた構造的な問題解説から始まり、如何にして室町幕府が全国政権へとなることができたのかを解説する本書。朝廷が発給する「太政官符」「官宣旨」という文書形式と鎌倉から室町を経て大いに発展した禅宗の存在を軸に語るのだが、実に面白い。室町幕府が抱えていた権威の脆弱性という問題をこの2点が解決していることである。三種の神器なき北朝を後ろ盾にしていた初期幕府が取るべき道はこれしかなかったのだろう。また禅宗が中央銀行の役割を果たしたという指摘は興味深く、寺社が権威と財力を室町末期まで誇示したことを思い出した。2020/12/16
MUNEKAZ
13
南北朝期に多く出された官宣旨の分析から、室町幕府の権力を論じた一冊。東国に在って朝廷と距離を置いた鎌倉幕府に対し、北朝と一体化し、朝廷の持つ全国支配システムを乗っ取った室町幕府という違いが、古文書の読み解きから鮮やかに示される。とくに鎌倉幕府を「主人」不在の弱い権力と見るところは興味深く、「御成敗式目」による法治も、上からの裁定ができないという権力の未発達を表しているとするのが面白い。また常に適切な先例を探し出し、幕府の権威をコーディネートする朝廷の役割も強調している。2021/06/16
kk
13
鎌倉と江戸に挟まれて、なんかグダグダのイメージの室町幕府。本書は、そんな室町幕府の武家権力の成熟という面に光を当て、鎌倉にはできなかったことを室町は目指したこと、なぜ目指さなければならなかったか、その限界は何処にあったか等について、朝廷権威の借用、禅林組織の活用、中央・地方関係のマネジメント等の面から説き明かそうとします。そして、主人不在に起因する鎌倉期の「法治」へのアンチテーゼとして室町将軍権力の有用性が再発見され、それによって中央・地方の均衡と全国レベルの統制が可能になったと論じます。なんかスゴイ。2020/12/29
-
- 電子書籍
- 『孤独のグルメ』巡礼ガイド3 SPA!…
-
- 電子書籍
- 息子と恋人(上) 新潮文庫