内容説明
40年経って見えてくる衝撃の真実! 「獄中で省察を深めた吉野と往復書簡を交わしながら作りたかったのは、あの時代への鎮魂歌である」――印旛沼から榛名山、あさま山荘へ。事件はいよいよ、クライマックスに。17人もの殺害に関与した吉野。若きエリートをあれほど残虐な行為に駆り立てた革命思想とは、なんだったのか? 総括の実態、私刑(リンチ)の経過。息詰まる心理描写で明かされる「連合赤軍」の素顔とは? 今なお親交を続ける著者による渾身の作! <上下巻>
※本書は2003年4月、小学館より単行本として刊行されたものに、その後新たに発掘された資料・インタビューなどを加筆、全面的に構成し直して上下に分冊したものです。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
belier
3
吉野と著者の小学校からの友人でNY在住の教育者津田氏「俺は吉野たちが引き起こした事件というものが、日本の組織の形態をもっとも生々しいかたちで見せつけたものという見方をしているんだ。戦争中の軍隊とか、いまの企業とか学校、あるいは家族といった単位にまでしみついている、自分たちを客観視できない閉鎖的な独善性。人間関係も理性的なものでなくて、自分たちだけにしか通用しない論理で互いに縛りあっていくような仲間意識。そういった組織が引き起こした象徴的な事件だと思う。」最近、連合赤軍の本を読みふけっている理由の一つだ。2020/07/13
Ikuto Nagura
3
革命左派と共産同赤軍派の武装蜂起路線から連合赤軍結成、山岳ベース事件、あさま山荘事件への流れを久々に再確認。永田と森の異常性(坂口もか)を事件の本質と考えるのが一般的な見解だと認識しているが、吉野をはじめとして、植垣、前澤、杉崎(本書ではS)、または雪野などの当事者の書簡・調書から、事件の原因の輪郭が浮かび上がる。「小さい頃から経済的な苦労はしてこなかった。吉野君もそうなんでしょう。貧しければ考えも違ってきたのでは」金子の母の指摘が一番響く事件への総括かも。誰のための革命か。何のための共産主義か。2014/01/02
みち
2
筆者は内部でリンチ殺人を起こした赤軍派の人々を、異常者たちではなく、普通の人たちととらえ、日本社会にも通底した何かがあるとみている。わたしも普通の人という考えには賛成するが、それを日本の社会を関連させるのは筆者の感傷に思える。彼らの行為は、共産主義、特にスターリンや毛沢東の粛清と共通するものを感じる。共産主義が持つ、既存の社会への被害者意識や自己正当化によって、人としてのブレーキは利かなくなるみたいだ。被害者意識が強い犯罪者、なんて日本だけでなく、どんな社会にもありふれている。2014/10/30
茶々太郎
2
下巻は「あさま山荘籠城」から事件後の裁判、判決といった流れ。ここに至ると他の資料で既知の話しか出てこない感じもありつつ。永田から著者に送られた手紙の責任回避ぶりが極めて見苦しく、事件の原因を指導者の個人的資質に求めたくなる。そうではないところに、この事件の救われなさがあるというのに。ともあれ客観的に冷静な著者の姿勢は素晴らしい。マル。2012/10/12
kwmr_
1
著者の幼馴染が引き起こした事件の10日間から逮捕、裁判、服役までを追う。自分が生まれる前の事件なので、現在とは位相の異なる歴史の一コマとしか感じていなかったけれど、読み進めて行くと、考えを改めた。やはり歴史は連続的で、かつ多面的だ。そして現代も(見え方は若干異なるかもしれないけど)似たような事象がたくさん転がっている。過去から学べる事は多い。2012/05/29