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内容説明
「日本に人種差別は本当にあるのか」。そのように疑問に思う人も多くいるだろう。だが日本にも人種差別撤廃条約で禁止されている差別が現実に起きている。間違えていけないのだが、現在の人種差別は人種を表に出せないかわり、文化の差異などを理由に差別を扇動しているのだ。なぜそのような差別は起きるのか? 日本ではそれが見えにくい理由は? レイシズムの力学を解き明かす。
目次
はじめに
第一章 レイシズムの歴史──博物学から科学的レイシズムへ
第二章 レイシズムとは何か──生きるべきものと死ぬべきものとを分けるもの
第三章 偏見からジェノサイドへ──レイシズムの行為
第四章 反レイシズムという歯止め
第五章 一九五二年体制──政策無きレイシズム政策を実施できる日本独自の法
第六章 日本のレイシズムはいかに暴力に加担したのか
第七章 ナショナリズムとレイシズムを切り離す
あとがき
主要参考文献
注
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
1959のコールマン
76
☆採点不可能。「レイシズムとは、人種化して、殺す(死なせる)、権力である」。簡素なタイトルなのに内容の重さに驚愕。「日本には反レイシズムの社会規範が無い」、と問題を日本に絞って論を展開している為、読むのに結構きつかった。今までレイシズムを知ったかぶりしていたことを思い知らされる。1952年体制なんて恥ずかしながら全然知らなかった。あとがきが胸に突き刺さる。「もうこれ以上、マイノリティの被害と歴史を消費してほしくない」。この本自体もすでに「消費」されているかもしれない。が、私は自分の事として受け止めたい。2020/12/08
厩戸皇子そっくりおじさん・寺
64
私には難しかったけれど、読んで良かった。読んで教わらなければ、下手すりゃ死ぬまで気付かなかった。下手すりゃ死ぬまで加害者だった。世の中に人種など無いという概念をこの本からもらった。これは一生使える大切な視点だ。そして日本には差別を罰する法が無い事実。だからレイシストの極右が平気で国会にいたりする。思えば税金でナチスを飼っているようなものである。私は政治にも社会にも関心が足らな過ぎた。知らない事は次世代に仇をなす事だ。そして日本人はやはり、朝鮮の人達に心底詫びるべきである。ごめんなさい。本当にごめんなさい。2020/12/08
venturingbeyond
27
良書。現代日本のレイシズムの実情を分析し、その問題点を明らかにしていく論旨の展開の切れ味もさることながら、その延長線上に、そうした問題状況を放置・黙認しているマジョリティである我々日系日本国籍者の責任を問い、反レイシズムの実践を促すアジテーションの書でもある。他の差別同様、現代日本のレイシズムも、「なぜ当事者が差別されるのか?」ではなく、「どのように差別が構造化され、マジョリティが、差別に加担し、これを放置・容認しているのか?」が問われなければならない。2021/02/02
かふ
22
ルース・ベネディクト『レイシズム』の副読本として読んだのだが、最近は民族主義的なレイシズムではなく、新自由主義的なレイシズムがはびこっているのだという。つまり「新自由主義」的な平等の概念をてこにして、例えば「生産性がない」という発言が働けない者は自業自得みたな風潮。それを取り巻く社会的不平等とかは政治的に隠される。それでいて利権構造で税金を食いつぶしているのは、差別主義者たちなのだ。公民権運動によって表立った差別用語は使えなくなった。新たな差別は権力と共に平等(逆差別)の言葉を盾にして弱者を追い詰める。2021/06/04
jamko
18
日本型レイシズムの成り立ちと歴史、その特殊な問題点を他国との比較も含めて丁寧に噛み砕いてくれた一冊。とても勉強になったと同時に日本のレイシズムむき出し社会の地獄みに改めて絶望する。〈たとえばヘイトスピーチ街宣に対して、社会が戦うべき差別だから否定するということではなく、「被害者が傷つけられるから」とか「被害者が反対しているから」という理由だけを重視しようとする傾向がある。〉そ、それー!差別はダメ、をまず理解してない人が多すぎる。反レイシズム規範がない。→2020/11/18