講談社文芸文庫 ある女の遠景

著者名：舟橋聖一【著】

講談社（2020/11発売）

• ISBN：9784061983540

内容説明

愛慕する年若い叔母・伊勢子の、自裁の謎を追ううちに、維子は、不実な男・泉中紋哉との官能の罠に、みずから墜ちていく。性愛に囚われた維子の現在、ミステリアスな伊勢子の過去、さらに情熱の歌人・和泉式部の生きた遠い昔……時空を隔てた３人の女人像を、巧緻な遠近法でとらえ、王朝文化と戦後風俗という「聖」と「俗」のあわいに、独得の官能美の世界を現出させた、筆者晩年の傑作。毎日芸術賞受賞作品。

感想・レビュー

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[tulip]

思い出したでしょ。あの晩は夕立のあとでしたね。あなたがしてくれって云ったけれど、私にはとても出来ないってことわったの。けれど、東京へ帰ってみたら、やっぱりしてあげたらよかったと思い直したわ。そんなにあなたがご所望なら、こっちは造作ないんですものね……今日は雪が降ってるし、怪電話はかかって来るし、せめてあなたのしてくれって云うことをしなくっちゃ。そうでしょう、してもいい？

2014/11/16