内容説明
GDP4倍の相手に挑み、全国を焼土とし、推計戦没者軍民310万人。戦死者の約6割が病死・餓死だったという。最後通牒とされたハル・ノートをあくまで叩き台に交渉継続し、開戦回避ができれば、米ソ冷戦構造の中、20世紀中盤に重要なプレイヤーとなることも可能だった。最終局面にいたる外交交渉過程には数々の愚策が重なり、冷静で明晰な対応がとられることなく、外交という国際政治の舞台で身動きがとれなくなった遠因を満州事変後リットン調査団の訪日から遡っていく。
日露戦争後まで極めて良好だった日米関係。世論の反発により、南満州鉄道の米資本との共同経営が頓挫して以降、アメリカは日本を仮想敵国とみなしていく。日本の北進を恐れたソ連による外交的駆け引き、国際防諜活動が活発化、日中戦争の泥沼化により、軍指導部は南進策を選び、結果、開戦に踏み切ることになる。多くの国民も大陸進出や開戦の熱に浮かされ、戦時体制に進んで協力し、世論が開戦への最大の圧力ともなった。一億総玉砕を叫び、市民と兵士、英霊の膨大な犠牲のうえに立って我々は一体何を望んだのだろう。【戦後75年書下ろし】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Yasuhisa Ogura
2
リットン報告書からハル・ノートを経て対米戦争に至る過程を「世紀の愚行」として、その失敗の原因を描いたもの。登場人物の感情が伝わってくるように描写されており、時代小説を読むかのように一気に読破できた。本書の基本的立場は、当時の政策決定は失敗の連続であるが、その背後にはコミンテルンの影響があったのではないかと推測している。残念ながら、その具体的な影響については書かれていない。登場人物の発言に出典が明記されていない点は、気になるところ。2024/02/09
くらーく
2
歴史修正主義って言うのだっけ?まあ、どうでも良いですけれど。1945年に日本が連合国に敗戦してから現在までの歴史を振り返れば、どの国、どの体制が勝利したか?そうですよ、ソ連、中国の共産独裁国家でしょ。だから、第二次世界大戦を引き起こしたのはコミンテルって話なんだろうけどね。正直なところ、私には分かりませんが、本書で言っている事もあるだろうなあ、と思いますわ。主観的な会話で読ませる部分は、小説的で面白いやり方だと思います。 それにしても、佐藤一族はすごいなあ。未だに影響があるものねえ。2021/01/23
Go Extreme
1
世紀の愚行 太平洋戦争開戦前夜 名を捨てて実をとる 行き詰まっている関東軍 世紀の感激 三国同盟締結 アメリカにとって三国同盟の意味の欠落 米国は謀略だと疑う人々 松岡切るべし 南方を取りにいくんだ 戦機は今だ 昭和の妖怪 俺が俺がの松岡 満州の西郷 肉を切らせて骨を断つ 見えないものに踊らされていた近衛 日本側から申し出ることは適当にあらず ハル・ノート悪人論の誤り 逃げの手を打つアメリカ 国民国家よりも組織を優先 尾崎秀実とゾルゲ事件 秩父宮邸 スパイの温床 宋美齢の対米工作 東条内閣の成立2025/05/21
石
1
リットン報告書もハルノートも、真意を正しく理解してれば、歴史は違ったかもしれない。が、道筋は違っても、同じ方向に行ったのでは、とも思う。勝負に出て、後の世の禍根を断つか、我慢や譲歩を重ねて、最悪を避けつつ、その場その場で微妙なバランスを保つ努力をし続けるか、小国なら後者しかないが、大国なら、それは優柔不断な煮蛙ルートに思えるだろう。それにしても、物語仕立てになってるぶん読みやすいが、語り口も内容も軽薄に思え、肝心な部分まで想像ではと疑ってしまう。あと、Mr.Xを大物風に描いてるが、単なる補助者なのでは?2022/01/30
パーやん
1
一般市民は兎も角、海外経験のある官僚達は対米戦争は敗戦必至と認識していたのに、何故回避出来なかったのか。外務省の東郷曰く、これ以上は殺されちゃいますよ...。そんな環境下でグルー大使の尽力が光る。日本の政治家は表舞台に名前も出て来ず存在感もなし。思慮なく暴走し一生の不覚と恥いる松岡洋右くらいか。国益がぶつかり合う外交には粘り腰が不可欠と思い知るが、今の政治家の貧弱さを見るに松岡級の軽薄な政治家ばかり...中国と燻る物騒な時代に将来の危機対応が心配だなぁ💦2021/02/07