内容説明
幕末、そして明治。京で生きる 嵐の世を生きる若者たちを描く、時代小説短編集――故郷を離れ、砥石運びの仕事をしていた矢吉は、幼なじみのトメと再会するが……。という表題作の他、幕末から明治の京の周辺、若いというには、あまりに年少の者たちの、汗して働き、行く道に迷う懸命の日々を描いた、珠玉の時代小説短編集。あさのあつこ氏絶賛の名作。第43回野間児童文芸賞受賞作品。
◎「どうしてこんなに、心を奮い立たされ、励まされ、うーん、明日もしっかり生きてみようかななんて思わされてしまうのだろう?」「何度鳥肌がたっただろう。幾度胸を躍らせ、固唾を飲み込んだだろう。何度も泣きそうになり、幾度も笑うことができた。」<あさのあつこ「解説」より>
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はつばあば
52
年寄には最高の読み物でした(#^^#)。江戸末期から明治にかけて京都の路地裏に住む子供達の足掻いて生きる姿が胸を打ちました。7つの短編ものです。道を踏み外しそうになった子に出会った時、普通にすっと手助けになれるような終幕を迎えたいものです。2022/02/27
takaC
51
半吉、夏吉、矢吉、風吉、長吉、小吉、正吉、皆に幸あれ。2018/04/10
はち
6
明治維新前後の京都を舞台にした短編集。歴史の流れに振り回された少年たちの物語…ただし歴史的な出来事は背景程度にしかでない。あれだけ苛烈な時代をまっすぐに生きられるのだから今もまっすぐに生きられるはずと思える一冊。京都の土地勘があるとより楽しめる。2010/09/26
YH
5
児童書。こういう本を子供の頃に読んでみたかった。貧しい生活の中で、盗んだり、スリをしたり、人を騙したり、そんな環境で生きる7人の主人公。でも、誰もが何かをきっかけに「盗む」生活から、「働いて」稼ぐ生活へと道を選んだ彼らのきっかけとなる心が温かい出来事。ファンタジーではなく、幕末の村の子供達に焦点が当たっているのがまた良い。2009/08/29
みゅ~
4
貧しくとも生き抜こうとする少年たちの物語。スリや博打のサクラなどに手を染めている自分が情けなく、それでも食べていくために、と抜け出せない悪事。そんななか、親や兄弟、幼馴染、仕事場の親方…、人々との出会いや触れ合い、かけられた言葉に動かされ、前を向き生きる決心をする彼らの姿に、読み手たる私も心を動かされる。2012/03/23