内容説明
錯綜する現代と過去の殺人事件をノルウェー警察本部のベテラン刑事が追う
真相が明かされても話のさきは読めない精妙巧緻の倒叙ミステリ
二〇〇三年六月八日、第二次世界大戦の英雄カール・オスカー・クローグの死体が自宅で発見された。ノルウェー貿易相まで登り詰めた老人は鳥のくちばしにつつかれたように切り刻まれ、犯人に強い殺意があったのは明らかだ。だが、手掛かりは凶器――ナチスの鉤十字が刻まれたナイフしかない。警察本部では犯人像を見いだせず、捜査は行き詰まってしまう。
そんな中、トミー・バーグマン刑事は二週間前に発見された三体の白骨死体との関連性を見出す。戦時中に殺された三人は、親ナチ派のノルウェー人実業家グスタフ・ランデの娘のセシリア、婚約者のアグネス・ガーナーとメイドだった。彼女たちはグスタフの近親者ゆえにクローグらレジスタンスの標的にされ、粛清された三人の縁者が復讐のためにクローグを殺した。そう推理したバーグマンは、六十余年前の事件の真相に挑む決意を固める。
一九三九年八月、アグネス・ガーナーは自らの手で愛犬を殺した。それがイギリス諜報部の最後の試験だったからだ。どうしてこんなことができるのか、自分でもわからない。確かなことは、ナチスを倒さねばならないということだけだ。その決意を胸にアグネスは故郷ノルウェーへ帰還する。人生を狂わせる運命の出会いが待ち構えていることも知らずに……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆのん
86
本書はミステリーなので自然と作中の主人公と同様に犯人探しをしてしまう…と思いきや、読んでいる途中からとても悲しい気持ちになってしまう。戦争が如何に人間を化物の様に変えてしまうのかと考えてしまうからかもしれない。人の命だけで無く、人生さえも狂わせてしまう。下巻では事件解決に向かって新事実が次々と現れる中、殺人に関係していると思われる登場人物達に同情していまうからか、悲しい気持ちな読後感だった。2572020/11/15
キムチ
64
過去と現実の交差の速度がアップするラスト、読み手も、真相への接近に息をのむ。 ホルト・ヴァルトホルストの名前が最後まで混乱し 苦労した。 あとがきで知るのだが登場人物のコアにいる人らにモデルがいたという事でさらなる衝撃。 一人は主人公としての映画化までされたとか・・見てみたい。 巣ごもり強化の昨今、視る映画はナチス関連にばかり向く。今享受できている「仮の幸せ」に漂う中、装丁に有るような状況は僅か 70年前 至るところであったのだと噛みしめずにはいられない。2020/12/12
のりすけたろう
34
読み終わったー\(//∇//)\✨なかなか濃厚な内容で悲しげではぁぁー(´;Д;`)となる読了感でした。2021/02/22
ばんだねいっぺい
32
見落としているものは何か。ようやく、点と点が繋がってきて線になってくれる。上巻の積み重ねられた描写が活きてくる。出てくる言葉の偶然と必然がってのは、この事件そのものだなと思った。ぜひ、次の話も読みたい。2020/10/10
み
26
下巻は、読みやすく感じられスイスイと。戦争はヤですね、何とも悲しい読後感です。刑事のバーグマンさんは、できる人なのかダメ男なのか、像が定まりませんでしたが2作目も翻訳されたら読みます♪2021/02/23