内容説明
繭から糸となり布に織られ、娘の晴着となり、嫁に贈られ、時を経て蒲団に再生され、はたきとなって命数が尽きる――絹の巡る道が暗示する、女と着物のかかわりの深さと面白さ。折々の悲しみや喜びがしみこんでいる着物たち。数々の花模様の着物とそれに纏わる女たちの姿を鮮やかに描き、着物への愛着と思い出が美しく繰り広げられる、半自伝的エッセイ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
24
椿や朝顔などの花と、その模様が付いたきものについての思い出。養母、紹介業をしていた実家に出入りする少女や女達、お手伝いや、しゅうとめになった人、義姉にあたる人など様々な女性達についての話であり、彼女達の着ていたきものの柄ゆきもそれに連れ思い出す。宮尾氏は食べるに困らない家に育ったとは言え複雑な家庭環境で、その後も「二度タンスをすっからかんにした」というくらい、貧しい時もあったが、恨みよりは自分が冷たくしたり相手の気持ちを汲む事ができなかった苦い思い出の方の方が辛い、という感じが伝わってくる。秀作である。2018/11/20
ううち
7
着物のエッセイ。数々の着物の思い出と共にその時代の生活が分かりやすく描かれています。 『変転の多い人生』とおっしゃる通り、今では考えられないような体験を多くされているせいか、持ち物に関しては意外とさっぱりした方なのだなという印象を持ちました。2018/08/23
まりこ
3
着物から語る作者の自伝的12章のエッセイ。当時の生活が分かる。病院の待ち時間に読むのにちょうど良かった。着物を着るには色んな事を考えなければならないが、普段着的なものを私も着たい。2013/12/12
だら焼酎
2
着物を趣味にしてからずっと読んでます いわゆる「有名人のファッション自慢」ではなく「ただ自分のお気に入りを見せてくれたんだ」というかんじ 高級だったりロストテクノロジーなのもあるけれどいやみはないのでいちばんすき
Jade
2
群ようことか、林真理子とかの着物エッセイより、ずっと深みがあり、人生が感じられる。2010/10/11