内容説明
本書を捧げられたジューリオは、教皇クレメンス7世となり、フィレンツェ、シエナを含むトスカーナ大公国の礎を築く。メディチ家による支配体制の確立に成功したわけだが、マキァヴェッリは単に君主制を志向していたのではない。実際本書では独裁的な君主のいないヴェネツィアをどの国よりも優れていると讃える。現実の政治に携わり歴史に学ぶことを重視したマキァヴェッリは、その国の政治風土や国民性にあう統治形態でなければ意味はないと考えていた。下巻にはメディチ家が誇る指導者・大ロレンツォの逝去までが描かれる。マキァヴェッリ理解に欠かすことのできない一冊。
目次
第五巻
第六巻
第七巻
第八巻
訳注
解説 「フィレンツェ史」はいかにして書かれたか
『フィレンツェ史』理解のためのフィレンツェ史年表
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
馬咲
2
コジモからロレンツォまでのメディチ家の台頭と専制の確立、体制維持のための攻防の叙述がメイン。抜きん出た財力を持つ銀行家としてコジモは平民には気前よく投資し、共和国への奉仕者として高い支持を得る。その一方で他の上層有力者には所有不動産に応じた課税法を制定して増長を抑え、自身優位の勢力図を都市の中で築いていく。その巧みな立ち回りはまさに権謀術数のお手本。「正当な理由」と「(正当な)恨み・復讐心」を対置し、前者よりも後者がより人に行動を起こさせる、といった道徳と政治の緊張関係を突きつける観察眼も他書同様健在。2022/08/09