内容説明
【東西哲学界の雄が、全体主義から世界を救い出す!】全体主義の渦に、再び世界は巻き込まれようとしているのではないか。日独ともに哲学は、二〇世紀の全体主義に加担してしまったが、では次なる全体主義の台頭をいかに阻止すればよいのか。その答えを出そうとしているのが、マルクス・ガブリエルだ。彼の「新実在論」は、全体主義の礎を築いたドイツ哲学を克服するために打ち立てられたものだったのだ。克服にむけてのヒントは東アジア哲学の中にあるという。本書は、東西哲学の雄が対話を重ねて生み出した危機の時代のための「精神のワクチン」である。○「上から」の力によって、民主主義が攻撃されているわけではありません。民主主義を破壊しているのは私たち自身なのです。市民的服従が、あらたな全体主義の本質です。――マルクス・ガブリエル
目次
はじめに
第一章 全体主義を解剖する
第二章 ドイツ哲学と悪
第三章 ドイツ哲学は全体主義を乗り越えたのか
第四章 全体主義に対峙する新実在論
第五章 東アジア哲学に秘められたヒント
第六章 倫理的消費が資本主義を変える
第七章 新しい啓蒙に向かって
おわりに
参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
岡本正行
79
全体主義、哲学にせよ、このレベルまで行くと、あまりにも難しい。政治体制としての全体主義と、一般的な哲学、それ自体は、あまりにも広範な意味があり、この本を読んで、いろいろ考える。実際、よくわからない。一方の学者は、東洋哲学の専門家、様々な幅広い知識と教養がある学者、とてもその足下にも及ばない。ちょっとレベルが違いすぎた。さりとて、いまから双方の学問を学ぶには、基礎が足らなさすぎる。根本的には、一般教養としてはいいだろう、私に、そこまでの意欲が欠けている。残念である。表題と内容が違った、勉強と能力諸々の欠如2024/10/03
harass
45
Youtubeで知る。この中のハイデガー黒いノート事件についてのみ拾い読み。2014年、行刊中ハイデガー全集での彼が書いたメモ帳の内容が大問題になり、このせいでハイデガーの評価ガタ落ちしたとのこと。当時のナチスドイツの時代もあり、反ユダヤ主義のナチズム思想と彼の哲学は別とされていたのだが、彼の個人的なメモ帳からはそんな区別が難しくなったとのこと。現在の欧米の哲学界ではハイデガーはタブーになっているとか。この本のMガブリエルの主張に完全に同意できないのだがなあ。判断留保。2025/01/19
フム
39
このタイトルでは読まないわけにはいかない、と思ってマルクス・ガブリエル初読み。中国哲学の中島隆博氏との対談。ドイツ哲学から東洋哲学の王弼、竹内好などと話題は幅広い。印象的だったのは、ハイデガーについて、その暗黒面を痛烈に批判していたことだ。完全に無意味な考え方、とかすでに脱構築されたなど容赦ない言い方に驚いた。それは彼の哲学運動の底には全体主義への批判があるからだ。2020/08/20
ころこ
34
タイトルの通り全体主義をアクチュアルなことを通じて簡単に論じられたら、こんなに楽なことはありません。本書の問題は、ネイティヴに会話できないふたりに大きすぎる問が立ちはだかっていることにあります。議論が難しいのではなく、気に入らない事象を全体主義という概念で批判しようとして振り切れてしまっている対談者側に問題があると思います。自分が気に入らないこと=全体主義では決してないでしょう。それ位、全体主義とは強い言葉です。資本主義は貨幣という共通言語によってコミュニケーションが出来、賃労働をしさえすれば出身階級から2021/02/22
那由田 忠
28
ポピュリズムを全体主義、グローバル資本主義の視点から考える。市民が自ら疑似独裁をつくり出し、インターネットを使うとデジタル難民となると言うが、トランプに非民主的要素がないなんてありえない。カントの人種差別やらハイデッガーのナチス的本性、議論を求めないハーバーマスなどの雑談の中で、「世界は存在しない」と唱えるガブリエルが、アーレントの後に中国哲学研究をする中島と不思議な議論を展開する。ある種の「一」を信奉する危険性はわかるとしても、議論は難渋すぎる。2020/11/27