内容説明
ヨーロッパ中世末期。魔女狩りが激烈をきわめる中、各地で怪物、凶兆、天罰等々、怪異現象が大増殖した。前代未聞の規模で押し寄せる「異なるもの」に対して、人々は恐れおののきながらも、その異形に魅せられていく。畏怖と好奇心の交錯するなかから、いかにして近代的精神は立ち現れてくるのか。そこにどのような人間的本性が見えてくるのか――。ヨーロッパ中世怪異を丹念にたどり、近代的思考の誕生を切り出す。
目次
はじめに
第一章 近世以前の驚異と好奇心
天変地異と奇形の誕生
「前兆としての驚異」説の祖キケロ
アリストテレスの驚異観
プリニウスにとっての自然と驚異
プリニウスと天変地異
異形の種族と奇妙な習慣
東方の驚異
古代ギリシア・ローマ人と「好奇心」
アウグスティヌスの怪物観
アウグスティヌスと驚異
驚異と奇蹟
アウグスティヌスと前兆
「欲望の病」としての好奇心
中世における好奇心の断罪
自然研究と好奇心
増殖する驚異
第二章 大航海時代の幕開けと驚異の増殖
世界地図に対するあらたな認識
新種の植物の発見と植物誌の発展
正確な植物描写の追求
怪物的な植物
動物誌の変容
様々な動物誌
テヴェと新大陸の植物
テヴェと新大陸の動物
奇形・怪物・彗星への眼差しと自然
テヴェは近代合理主義者の先駆けか
火山噴火は驚異か自然現象か
驚異としての悪魔崇拝者インディオ
魔術と魔女と好奇心の断罪
パレと『怪物と驚異について』の重要性
パレと新大陸の怪物
幻獣と実在する獣の変奏曲
第三章 氾濫する宗教改革時代の怪物と驚異
「修道士仔牛」と「教皇驢馬」
カトリックの怪物解釈──宗派論争
プロテスタントの怪物解釈──予言
世界の終末と怪物・驚異の増殖
イングランドのバラッドにみる怪物描写
罪びとへの警告としての怪物誕生
パレによる怪物誕生と神の怒り
パレの語る驚異としての彗星
天空から降り注ぐ石、血!
地震と火山噴火
「神の怒りの徴=凶兆」から「自然の原因」へ
残存する「神の怒り」としての驚異
パレと好奇心
近世における好奇心
好奇心に対する激しい攻撃
魔術・驚異と好奇心
第四章 「魔女と好奇心」、そして近代的精神の成立
ファウストの実像
ファウスト伝説
貪欲に知識を求めるファウストと好奇心
ファウストと魔術と驚異
魔女信仰と悪魔学書
イングランド国王ジェイムズ一世と「魔女と好奇心」
ボダンと「魔女と好奇心」
魔女と魔術と好奇心
占星術・錬金術と好奇心
魔女狩りの終焉と好奇心の変貌
好奇心の表象としての女性
女の好奇心
罰としての「女の好奇心」
フランシス・ベイコンと好奇心
「男の好奇心」と近代的学知の展開
「好奇心観の変化」と「近代的精神の成立」
おわりに
主要参考文献
図版出典
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