筑摩選書<br> 魔女・怪物・天変地異 ──近代的精神はどこから生まれたか

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筑摩選書
魔女・怪物・天変地異 ──近代的精神はどこから生まれたか

  • 著者名:黒川正剛【著】
  • 価格 ¥1,540(本体¥1,400)
  • 筑摩書房(2020/09発売)
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  • ISBN:9784480016713

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内容説明

ヨーロッパ中世末期。魔女狩りが激烈をきわめる中、各地で怪物、凶兆、天罰等々、怪異現象が大増殖した。前代未聞の規模で押し寄せる「異なるもの」に対して、人々は恐れおののきながらも、その異形に魅せられていく。畏怖と好奇心の交錯するなかから、いかにして近代的精神は立ち現れてくるのか。そこにどのような人間的本性が見えてくるのか――。ヨーロッパ中世怪異を丹念にたどり、近代的思考の誕生を切り出す。

目次

はじめに
第一章 近世以前の驚異と好奇心
天変地異と奇形の誕生
「前兆としての驚異」説の祖キケロ
アリストテレスの驚異観
プリニウスにとっての自然と驚異
プリニウスと天変地異
異形の種族と奇妙な習慣
東方の驚異
古代ギリシア・ローマ人と「好奇心」
アウグスティヌスの怪物観
アウグスティヌスと驚異
驚異と奇蹟
アウグスティヌスと前兆
「欲望の病」としての好奇心
中世における好奇心の断罪
自然研究と好奇心
増殖する驚異
第二章 大航海時代の幕開けと驚異の増殖
世界地図に対するあらたな認識
新種の植物の発見と植物誌の発展
正確な植物描写の追求
怪物的な植物
動物誌の変容
様々な動物誌
テヴェと新大陸の植物
テヴェと新大陸の動物
奇形・怪物・彗星への眼差しと自然
テヴェは近代合理主義者の先駆けか
火山噴火は驚異か自然現象か
驚異としての悪魔崇拝者インディオ
魔術と魔女と好奇心の断罪
パレと『怪物と驚異について』の重要性
パレと新大陸の怪物
幻獣と実在する獣の変奏曲
第三章 氾濫する宗教改革時代の怪物と驚異
「修道士仔牛」と「教皇驢馬」
カトリックの怪物解釈──宗派論争
プロテスタントの怪物解釈──予言
世界の終末と怪物・驚異の増殖
イングランドのバラッドにみる怪物描写
罪びとへの警告としての怪物誕生
パレによる怪物誕生と神の怒り
パレの語る驚異としての彗星
天空から降り注ぐ石、血!
地震と火山噴火
「神の怒りの徴=凶兆」から「自然の原因」へ
残存する「神の怒り」としての驚異
パレと好奇心
近世における好奇心
好奇心に対する激しい攻撃
魔術・驚異と好奇心
第四章 「魔女と好奇心」、そして近代的精神の成立
ファウストの実像
ファウスト伝説
貪欲に知識を求めるファウストと好奇心
ファウストと魔術と驚異
魔女信仰と悪魔学書
イングランド国王ジェイムズ一世と「魔女と好奇心」
ボダンと「魔女と好奇心」
魔女と魔術と好奇心
占星術・錬金術と好奇心
魔女狩りの終焉と好奇心の変貌
好奇心の表象としての女性
女の好奇心
罰としての「女の好奇心」
フランシス・ベイコンと好奇心
「男の好奇心」と近代的学知の展開
「好奇心観の変化」と「近代的精神の成立」
おわりに
主要参考文献
図版出典

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

吟遊

13
16,17世紀に怪物や天変地異などの「驚異」がやたらと取りざたされるなか、それまでの「悪徳としての好奇心」(エヴァが知恵の実を食べたときの好奇心のような)から「知的原動力としての好奇心」へ好奇心の地位の転換が起こるという話。その結果、近代的なマインドが打ち立てられる。その転換期を描く。読みやすい。2018/11/13

hal

10
古代から近世以前に奇形や天変地異をどう考えたかが書かれている。古代に、不思議な出来事があったのを「前兆」と考えるのはまあわからなくもないが、「聖書が絶対正しい」となった後の「好奇心は悪」の価値観は恐ろしい。"monster"の語源が「警告する・戒める」にあるというのはなるほどだった。2019/10/21

さとうしん

7
怪物的な動植物、いわゆる「奇形児」、天体現象、魔女などの驚異を媒介に、西欧の「好奇心」の位置づけの変容から近代的精神の成立を探る。否定的な意味での好奇心が女性と結びつけられるなど、その限界も示しているのが面白い。怪物の出現が自然や社会の秩序が乱される前兆となるという発想は中国にも存在したが、中国ではそれがなぜ「近代的精神」の成立に寄与しなかったのだろうかというようなことを考えつつ読み進めた。2018/08/24

mob

6
流行りの本では簡略化されがちな、驚異と好奇心への姿勢の変化をじっくりと追うことができる本。確かに投資レベルでは、新大陸や大航海時代の成功体験が一気に航海・探検への投資を豊かにして歯車が回り始めたが、新たな出会いは驚異の激増にも繋がり、宗教戦争でプロテスタントが黙示録的煽りに驚異を悪用したのも大きく、宗教同士で潰しあえばいいのに好奇心までとばっちりを食うことになった。様々な知が活版印刷で広く検証可能になり、航海・探検に財がつぎ込まれ知も成功体験も積み上げて、科学に教会外のスポンサーがついてようやく逆回転だ。2021/09/27

Book Lover Mr.Garakuta

5
図書館本:読了。ヨーロッパ中世から担を発した精神的世界史(宗教や歴史的風土から)を読み解いた本。2018/11/11

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