内容説明
霧ふかい冬のリヨンの実娘殺しを扱う「ジャニーヌ殺害事件」、夫の死を無意識に願う妻の内面を描く「共犯者」、屈折した女の復讐心をさぐる「偽作」、物に憑かれた人間の泥沼を抉る「憑かれた人」など、日常生活のひだの中に素材をもとめ、深層心理の陰影を自在な筆で掘り下げる、哄笑と怪奇の好短編9編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
50
日常生活から深層心理の陰影を抉り出しています。クリスチャンだからこそ汚れた世界やイヤミスが鮮やかに見えてしまうのでしょうね。2021/05/07
あたびー
30
巻末の解説を読むと、どうもこの時代「怪奇」と言ったらミステリーのことだと言わんばかりの言い様だ。この前に出ている怪奇小説集には幽霊の出る旅館の話等あったのだが、この本にはそういった物は1つもなくて、怪奇の「カ」もない話すらある。これは私にしてみれば「普通小説」と言わなくてはならない。ただ、前巻にも出てきた著者リヨン時代に実際にあった子殺しの話は、ルヴェルでも書きそうな、暗く救いのない傑作だと思った。2020/08/24
musis
19
好みだった。人間ドラマだなと感じた。怪奇小説とあるので、おどろおどろしいかと思っていたが、少し違った。どの話も、人間の心理がふとしたところに滲み出て、じんわりと恐くなったり哀しくなったりする。落としどころも好き。感情の起伏はそこまでなく読める。心に情景が自然と広がった。2014/06/24
koushi
10
我欲が悪意を持って育つ時、人は最も醜く恐ろしくなる。その悪意に支配されてしまうと、その人はもはや人とは言えなくなるのかもしれない。心の醜さ。誰にでも少しはあるだろうが、悪意に支配されてしまった時には気づきようがない。それはある意味幽霊話よりも恐ろしいこと。2015/01/10
色々甚平
9
人の醜い部分が露骨に出る作品は、絶対に誰か振り回される人々が出てきてドラマになるので面白い。クリスチャンだからこそ汚れた世界、罪の領域まで触れなければならないという著者の姿勢が見られる醜悪さ。俗に言うイヤミスとは違う心苦しさや、情けなさ、虚しさを感じられる作品集だった。怪談話やミステリー集ではないので、その辺は注意。これを読んだら、遠藤周作による世にも奇妙な物語を見てみたくなってしまった。2020/01/27
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