内容説明
二度映画化された『野火』を中心に『この世界の片隅に』『戦艦ヤマト』など戦争映画を論じる。
娯楽映画の抵抗と迎合―
大岡昇平による原作『野火』(一九五二年)。
市川崑による映画『野火』(一九五九年)、そして塚本晋也版『野火』(二〇一五年)。
同一作品は、表現形式によって、時代によっていかに変奏され、受容されるのか。
また、山本五十六の表現から『戦艦ヤマト』『この世界の片隅に』まで、娯楽作品において戦争はどのように表現され、消費されてきたのか。
社会学・歴史学・人類学のアプローチから、文学と映画に描かれた戦争を読み解く。
【著者】
戦争社会学研究会
戦争と人間の社会学的研究を進めるべく、社会学、歴史学、人類学等、関連諸学の有志によって設立された全国規模の研究会。故・孝本貢(明治大学教授)、青木秀男(社会理論・動態研究所所長)の呼びかけにより2009年5月16日に発足し、以後、年次大会をはじめ定期的に研究交流活動を行っている。
目次
特集1 「戦争映画の社会学」①『野火』の戦争社会学
『野火』の戦争社会学―特集企画について/ 山本昭宏
戦争映画の社会学のために―塚本版映画『野火』を題材として/野上 元
「野火」に映る戦後―「難死」と「嘲笑」の後景化/ 福間良明
『野火』の戦争社会学のために/成田龍一
『野火』にみる武蔵野の風景とフィリピンのゲリラ/青木 深
人肉食が起こりうる世界を物語るということ―ふたつの映画版『野火』における宗教的要素の扱いをめぐって/松下優一
特集1 「戦争映画の社会学」②戦争娯楽映画の系譜
「戦争映画」の拡大領域/山本昭宏
戦争娯楽映画を読み解く―山本五十六作品を比較する/好井裕明
『宇宙戦艦ヤマト』から『君の名は。』へ―美少女が象徴する戦うアニメの系譜とその論理/足立加勇
戦争遺産へのまなざし―アニメーション映画『この世界の片隅に』を事例に/濱田武士
ほか