内容説明
ついに突きとめた007便コ-ス逸脱の謎――秘密の米軍レーダー記録を入手し、大韓航空007便は、アンカレッジ空港出発直後からすでに北に逸脱していたことが判明。「ナブ」切り換えミスという小さな操作ミスでも、269人の生命を奪い、世界を震撼させる大事件の引き金になりうるのであった。スパイ説の内実を暴き、事件の真相を解明する国際的スク-プ! <全3巻>
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
29
”暗闇”の中での原因の考察・推察。先入観やプロパガンダに惑わされることなく、真実を追究する著者の姿勢と、”可能性”のPro/Con。冷戦の齎したソ連軍内の持続的な緊張感、INS操作における人的ミスの可能性など・・・。信頼感の欠如や慢心といった人間の心が起因の人災という印象。鍵を握るFDR/CVR。30年以上経った今年3月発生したマレーシア航空事故でも、同じ「落下地点の特定」の問題。置き去りにされる被害者家族の心の痛みも同じであろうと推察。2014/05/03
KEI
12
上巻では外交の問題と国家としてこの事件をどの様なシナリオで取り扱うのかと言った、事件間もない時期のレポートであった。この中巻は何故007便がコースを大きく外れていたのか?機器の問題か、ヒューマン ファクターか、スパイ説か?また、何故ソ連は要撃機を撃墜したのかという点について、膨大な事実の資料、取材、専門家チームを作っての検討を元にレポートされている。専門的な点も多く理解は追い付かないが、それでも迫力があった。一遺族の「一過性の惨劇とは思えない」との文章と日本の外交スタンスの違いが辛い。労作。2015/12/12
AICHAN
8
上巻から引き続き各国要人間の政治的、軍事的な駆け引きがドキュメンタリータッチで描かれている。この中巻では特に、ソ連が主張する007便の「スパイ飛行説」の真偽に迫っていく。そして、そもそもなぜ007便が規定の航路から外れてソ連領空に入ったかの謎に、広範かつ綿密な取材で肉薄していく。まるで推理小説だ。柳田さんは執拗に取材するタイプなので筆が遅いと認識していたのだが、このドキュメンタリーに関してはまるで別人のように短期間で膨大な取材をこなしている。2011/03/16
卯月
2
職場本棚。大韓機は何故、コースを逸脱したのか。撃墜という結末と、ブラック・ボックスを捜索できない点を除けば、大韓機の足取りを追う調査手法は、通常の事故と同じだろう。一所懸命やっていたのにどこかに落とし穴があって事故になる、ヒューマン・エラー。迷路をくぐり抜けるようなミスの連鎖。真相に迫る過程は、ミステリのようだ。しかし、ソ連が回収したらしきブラック・ボックスのデータが公表されない限り、謎解きの決定的な正解は出ない。2012/03/31