内容説明
日蓮が唱えた「立正安国論」の中にある「他国侵逼」とは、大国が日本に攻め寄せるということを意味した。即ち、大陸の蒙古による九州への侵攻である。その予言を確かめ、蒙古の様子を探るために、日蓮の身の回りの世話をしていた見助が、朝鮮半島に最も近い島、対馬まではるばる遣わされたのだ。長旅を終えて対馬に到着した見助は、島民に温かく迎えられる。古くから島に住み着いている阿比留一族との交流を深め、蒙古の情報を見助は次々に入手していく。他方、日蓮はこの間、幕府からの弾圧や浄土宗による法難に遭うが、対馬と東国の間で二人の手紙のやりとりは続いた。そして見助が対馬に入って十余年、ついに蒙古が動いたとの情報が……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yamatoshiuruhashi
44
なるほど、下巻では蒙古襲来が描かれる。とはいえ、これだけのボリュームの物語に下巻の半分ほどにしか襲来の話はない。華々しい戦の描写も殆どなく見助の見た蒙古勢による対馬の蹂躙、そして二度目の襲来では狼煙守としての動きが中心となる。それなのに、戦の実態が生々しく描写される。まさに見助が日蓮の耳目となって働いていることがそのまま活写されていく。不思議な小説だ。東公園にある日蓮像の台座には手に穴を穿たれ繋がれた人々が描かれていて、子供の頃これを見て恐ろしさを感じた。それを含め元寇防塁などを改めて見に行きたい。2020/10/20
白いワンコ
24
下巻となり、ついに「襲来」。その過程は史実に明らかだが、見助の眼を通して知る対馬に驚き、考えさせられる。日蓮の耳目手足たる見助の年月は長く、重い。それ故、最終章で感じる感動は、実に得難い読書体験となる2020/08/31
ちゃま坊
17
元寇の対馬をテーマにした「ゴーストオブツシマ」というTVゲームを始めたので再読。モンゴル軍の襲来の描写はこの下巻から。戦闘は対馬、壱岐、福岡と進む。一方的な侵略戦争はどの時代も略奪と虐殺がつきもの。大河ドラマと小説とゲームを比較してみると、流血残虐描写をどこまでやるか、時代考証はどこまでやるか、でいろいろと考えてしまう。2024/07/14
TheWho
15
下巻に入り対馬に辿り着いた主人公は、対馬で平穏な日々を送りながら高麗や宋の情報を日蓮に送り続け、蒙古が襲来する事を確信する事になる。その間日蓮は更なる弾圧と法難に会いながらも確固たる日蓮宗を確立することとなる。そして、現場証人として対馬の蒙古による惨劇が赤裸々に主人公の口から語ることとなる。二回目の蒙古襲来「役弘安の役」を経て主人公は、日蓮の信濃身延山に帰る既に日蓮は没し、そして主人公の死で物語は終焉する。主人公と日蓮の間柄に悲哀が漂う秀作です。2022/12/18
のれん
14
日蓮宗、というか修行する僧の苦悩、後悔を描いている印象が強い下巻。 蒙古の襲来、情報を対馬から送っていく展開から旅を通じて逃げる流れの中で、侵略に対する恐怖感、反抗心は出てこず、ただただ失恋の後悔、敬愛する師との再会への渇望、といった感情が出てて、蒙古襲来を第一テーマにする必要あったか? とすら思う。 忠節を誓い、純真であるからこそ二人は出会えず、しかしそれ故あれほど焦がれ合えた。美しい師弟愛であり、この激情はいかにも江戸時代の歌舞伎のような題材である。 それだけに遠目で見る舞台を見た気分である。2021/06/06
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