内容説明
格差がファシズムを呼び寄せる
ヨーロッパにおける相次ぐ右派政権の誕生、イギリスのEU離脱、アメリカのトランプ大統領誕生。西側を結束させてきた民主主義の価値観は、いまなぜ動揺し、世界は混乱しているのか。新たなファシズムの台頭に警鐘を鳴らす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaoru
74
「永遠の政治」を目指すプーチンは西側社会を敵視し、メルケル首相への陰湿な嫌がらせやポーランド首相への盗聴を試み、ヒラリー・クリントンへの妨害工作によってロシアが後援するトランプをアメリカ大統領の座に就けた。トランプの義理の息子に流れた巨額のロシア・マネー。ロシアのメディアの大立者は「『民主主義』や『人権』といった言葉がトランプの辞書にはない」ことを喜び、ロシアの外交委員長は「トランプなら西側の機関車を脱線させてくれる」との希望を口に出した。今のウクライナ侵攻は「独裁者」が帝国的な野望を達成しようと→2022/03/18
syaori
63
下巻ではロシアが15~16年にEU諸国に仕掛けたサイバー戦争や米国大統領選への介入などが語られます。作者はそれをロシアが泥棒政治を輸出し民主主義を撃つ過程として語りますが、本書の通りなら16年の米国は既にロシアに似ていたのであり、その根本には新自由主義とグローバル資本主義による富の分配の不平等と格差の拡大があって、それが泥棒政治を惹起しているのではないかと感じます。ただ作者の、個性や平等などの美徳を失わないために現在の問題を直視し自分にできる・すべきことを探していかなければという言葉は大変心に残りました。2023/03/29
天の川
53
トランプ大統領誕生を後押ししたロシアによるSNSの工作などが事細かに書かれる。フェイクニュースによる世論操作と言論統制は歴史的にも繰り返されてきたことだが、ネット社会になってさらに複雑になっているように思える。この本の地続きに今のウクライナ情勢がある。報道規制をし、黒を白と主張し、世論操作を行う為政者はもっての外だが、玉石混交の情報が溢れる社会も又、問題をはらんでいるのではないか。この本や日本のマスコミも含め、何か一つの出どころの情報を妄信するのではなく、メディアリテラシーを培う努力が必要だと思う。2022/04/05
風に吹かれて
18
ドイツが難民を受け入れたいなら難民を増やしてやれとシリア爆撃を行い、数々の事実を捻じ曲げ多くの人々を苦しめるロシア。金と欲望のかたまりの不動産開発業者でトランプの義息ジャレッド・クシュナーをはじめとした側近たちのロシアとの汚れた関係、アメリカ国民全員が見たに違いない大統領候補トランプを推すロシア発偽ツイッター、ヒラリー・クリントンを貶めることを狙ったロシアによるe-mailの暴露など、読んでいるうちに胸が気重になってくる。➡2021/04/07
ブラックジャケット
13
トランプ大統領誕生にロシア・プーチンの果たした役割は大きい。大成功した不動産王というレッテルさえロシアマネーでジャッキアップされたものだった。ソーシャルメディアに対するデジタル攻撃も想定以上の効果を上げた。トランプのスキャンダルが出れば、同時期に反ヒラリー怪奇報が津波のように押し寄せる。開かれたメディアの特性を逆手に取ったプーチンの黒帯の荒技だ。世界初のサイバー戦争にアメリカは一敗地にまみれた。著者は民主主義の衰退に警鐘を鳴らす。健全性のタフさが消え、デジタル空間の反知性的なヒステリーが巨大墓穴を掘る。 2020/03/04