ちくま新書<br> 人事の古代史 ──律令官人制からみた古代日本

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ちくま新書
人事の古代史 ──律令官人制からみた古代日本

  • 著者名:十川陽一【著】
  • 価格 ¥825(本体¥750)
  • 筑摩書房(2020/06発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480073112

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内容説明

古代日本において、国家を運営するうえで律令官人制という仕組みがつくられ、緻密な評価システムに基いて天皇を中心とする官人統治がなされた。そして政治が動き出し、官人の差配も変化し、報復左遷や飼い殺しのようにみえる人事もまかりとおるようになったのだ。では、その実態はどのようなものだったのか? 人が人を管理する上で起きる様々な問題を取り上げ、古代日本の新たな一面に光をあてる。

目次

プロローグ
律令制の記憶
古代日本の国家
律令制と官人
本書の概要
第一章 国家と人事のしくみ
1 支配機構と支配者層
太政官──律令国家の中枢
都城と朝政
議政官人事
古代の人名
ウジ名とカバネ
皇位継承と皇嗣の決定
新たな身分標章──クライの導入
揃わない足並み
藤原氏と奈良時代前半の政治動向
2 人事と行政
官人たちの身分秩序
位階と官職
勤務評定のシステム
昇進のしくみと実際
考選木簡と削屑
任官の制限
官司内の運営と責任
3 家柄主義とのせめぎあい
官人になる──出身
官人養成
出身後のキャリア
大伴家持の不遇と奈良時代半ばの政治動向
官人制と氏族秩序
第二章 官職に就けない官人──散位の世界
1 散位とは何か
官人ではない有位者
増える有位者
散位とはなにか
官人の定義と給与
写経所勤め
人事の綱引き
2 皇族・貴族の家政機関と散位
皇族・貴族の家に勤める散位
トネリたち
仕えるべき主人
家政機関における散位の位置づけ
国家にとっての皇族・貴族の家政機関
散位を把握する意味
第三章 政争のあとさき
1 国家にとっての官人
散位となる事情
律令制における刑罰と官人
官人身分の 奪
日本における律への対応
散位に落とす
落とされた人々のその後
散位への処分
刑罰免除からみた官人
2 官人にとっての官人制
官人の特権
譲りあう人々
都と地方
威信財としての官人身分
ネットワーク形成と交易
仲麻呂の乱──奈良時代後半の政治動向①
称徳朝と道鏡──奈良時代後半の政治動向②
官人身分のメリットとリスク
第四章 平安京と官人制の転換
1 平安遷都と官人社会
山背から山城へ土師氏の一族
貴族層の再編──平安初期の政治動向
家と官人養成
摂関政治の確立──九世紀末以降の政治動向
2 都城と官人制の変化
内裏の変化
平安時代の政務
大内裏の荒廃と官司の縮小
官位相当と位階制の変容
叙位・任官制度の変化
年給
受領とその統制
昇進コースと求められる資質
3 持続する官人制
給与と平安時代の官人制
散位寮の“廃止”とその後の散位
権中納言──余剰人員と官制の変容
昇進と名乗り
崩壊か変容か
地方に根差す官人身分
平安中後期の地方社会と散位
太政官という存在
エピローグ
巻末資料
参考文献
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ホークス

41
2020年刊。律令制の官僚システム、官吏の処遇の謎を解く。興味あるテーマなので面白い。官吏は官職と位階(昇降格あり)を持つ設定だが、位階はあって官職の無い「散位」も多かった。膨張する官吏層の子弟、職にあぶれた高官、国家に寄付した豪農など多様な者が含まれる。散位の受け皿は、臨時の写経とか貴族の従者になる等、システム外の仕事。官僚社会のクッションに、有力者の掌握にと、散位は重宝された。この制度の出来は別として、凡人が凡人を治めるという現実は、何らかの便法を要求する。それで凄惨な共喰いが減るのなら意味はある。2022/06/19

びっぐすとん

16
図書館本。新聞書評見て。律令制度という古代お役人のシステムが、想像以上に複雑難解なものだったことに驚いた。「散位」も肩書きはあるけどポストがない今で言う窓際みたいなものかと思っていたが、割りとよくある現象で、ポジション再ゲットの可能性もあり、役人専用人材派遣部署からパートタイマーに出されるなど、当時も中間層の勤め人は大変だったんだな。仕組みとしては機能しなくなった後も役職名だけは明治まで残ったのも、日本人の権威好き、箔付け志向、その人の価値をはかる目安として分かりやすかったからなのか? 2020/11/28

bapaksejahtera

13
人事という誰しも関心のある事柄を主題に、律令制の初期から中世初期その崩壊迄の歴史を説く良書。唐の官制を採入れた我が国は、それを天皇家に拮抗せんとする大豪族を国家の官人秩序に取込む為に用いた。唐制では位階は官職に付随した(だが隋唐以降の科挙とは言え官僚制の過半を構成したのは門閥による)が我が国では、個人更に蔭子孫制によって、実質的に有力家系に益する制をとった。当初は行政法たる令が先行したが、刑法相当の律及びその施行令が遅れる。軌道に乗るや律令制が崩壊していく。官職名が通称として浸透する発端の記述が興味深い。2022/11/29

kawasaki

8
初期には結構しっかり行われていたらしい人事考課、制度の日唐比較、有資格無任所の「散位」の位置づけや、非常勤?な下級官吏の生活、郡司クラスの「譲り合い」など、紹介される制度運用が興味深い。また、往々にして「形骸化」といった言葉でまとめられ、中国の真似をしたけどダメだったよ、という否定的なイメージになりがちな制度の変容を捉えなおす。位階によって序列づけるシステムが社会に根を下ろし、庶民に至るまでナニ兵衛・ナニ右衛門と名乗るようになるのであるから、やはり大きな制度の導入であったのだなあと改めて思うなど。2020/09/13

Mentyu

6
古代日本の律令官人制について、現段階の研究状況をまとめている。特に筆者の専門領域である散位について詳しい。日本古代史をやっていれば散位という言葉を目にすることは少なくないが、同時にそこまで意識が向かない対象でもある。そんな散位の職掌と内実を分析することで、律令国家の運用体制を明らかにしようとする本書はなかなか興味深いものだった。2020/11/04

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