内容説明
「治したくない」医師と「治りませんように」と願う当事者たちが織りなす浦河の四季。べてるの家の、さらにその先へ歩き出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
fwhd8325
57
面白いと言っていいのか迷いますが、とても面白く読みました。最近は、普通をテーマとしてた小説も多くあり、普通とは何だろうと考えます。先日読んだ「アナザー1964パラリンピック序章」では、失ったものよりも残った機能を考えることが書かれていました。ひがし町診療所は、悉く今までの慣習や常識にとらわれない診療を行っています。その結果、医療とは一体何なのだろうという疑問が浮かびます。著書は、現状の治療に逆らうものではなく、本当に必要なものを考え続けた記録です。専門ではありませんが、本当に素晴らしく感動しました。2020/06/17
ネギっ子gen
23
北海道の浦河に通い始めて23年――。自らの人生行路を振り返って記す。<それは私が会社という組織から転落していった時期と重なっている/ところが人生半ばで道を踏み外し、弱さに引かれ、少数派の中に入って主流から遠く離れてしまった/「引き寄せられるように、逃れるように」浦河に行った/その浦河で出会ったのが精神障害者と呼ばれる人々だった>と。その著者が、精神障害やアルコール依存を抱える人々のための、開設から6年目の小さなクリニックで、<当事者メンバーがどのような苦労をしているか>に焦点を当てたルポを書いた―― ⇒2021/03/10
Mc6ρ助
9
『・・川村先生が子どものころの漁師の世界はいまの社会とは異なる力学が働いていた。人間を表層で分析し、分類し、管理し、統制するのではなく、原始のまま、未分化のままにとどまろうとする・・精神障害者といわれる人びととともにいようとしたとき、彼らの問題に注目して治そうとするのではなく、まず丸ごと受けとめようとする・・「それでいいのだ」と受けとめること。・・主体性という概念が希薄になった不分明な混沌のなかにこそ、根源の安心がありはしないだろうか。』精神障害に向き合うことは、人とはなにかと問うことなのかも知れない。2020/10/15
jackbdc
8
べてる関連を探していて偶然たどり着く。浦河の先端性の一端を垣間見た気分にさせてくれる出会えて良かったと思える本。著者はこの界隈を20年以上取材をしてきたというだけあって背景描写など巧みであり内容に説得力を感じた。主人公である川村医師は向谷地氏と日赤病院で出会い、感化されてこの地で働くようになったが、入院患者の在宅化を上手くすすめすぎて病院経営を圧迫し病棟が潰れて、自ら受け皿を作る形で診療所を経営しているという流れ。これら少数の英雄の物語ではなくこの地の関係者、住民や患者等による文化の賜物なんだと感じ入る。2021/11/09
kanki
5
良本。障害とともに。健常者にならなくていい。「精神科医が治療に熱心になるとろくなことがない、コントロールしたがる」2020/08/25