内容説明
30年前、本当は何を埋めたんだろう。
謎の骨格標本が発掘されたことを報じる地元紙の小さな記事を見つけた家具職人・豊は、数十年前の小学生時代、仲間数人で山中に骨格標本を埋めたことを思い出す。
しかし、それは記事の発掘場所とは明らかに異なっていた。同時に、ある確かな手触りから「あれは本当に標本だったのか」との思いを抱いた豊は、今は都内で広告代理店に勤務する哲平に会いに行く。最初は訝しがっていた哲平も、次第に彼の話に首肯し、記憶の底に淀んでいたあることを口にする。リーダー的存在だった骨格標本埋葬の発案者・真実子の消息がわからないなか、事態は思いも寄らぬ方向に傾斜していく。
※この作品は過去に単行本版として配信した『骨を弔う』の文庫版です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
散文の詞
150
タイトルの通りのことが起こって、その事を巡る話ですが、過去から現代へと記憶を探りながら徐々に謎が明らかになっていく感じは、まさにミステリーという感じです。 まあ、なんとなく全体像が解ってくるので、中盤からは、これをどう着地させるのだろうというほうに興味が移っていきますが、それなりに面白いです。 で、こんな感じの終わりかと、思っていたら、最後に衝撃です。 ここまで書いていいのか? って、小説なんですけどね。ちょっとだけ感心しました。 2020/12/03
H!deking
108
謎の骨格標本が発掘されたことを報じる地元紙の小さな記事を見つけた家具職人・豊は、数十年前の小学生時代、仲間数人で山中に骨格標本を埋めたことを思い出す。※Amazonから抜粋 いやーマジですか。そうですか。久しぶりの宇佐美まことさんはめちゃくちゃ面白かった。これは今年のベスト入り確定ですね。主人公たちと一緒にモヤモヤしてみんなと一緒にスッキリする。素晴らしい作品でした。ラストもめちゃくちゃ好み。宇佐美さん全部読んだわけじゃないけど、ちょっと作風がユーモラスっていうか、明るくなった気がするね。これはおすすめ!2020/07/08
のぶ
107
地元で骨格標本が発掘されたことを新聞が報じた事から物語は始まる。哲平、正一、豊、京香、真美子の5人が小学5年の時に、山中に骨格標本を埋めたことを思い出す。ただ、その時の状況は、記事の発掘場所とは明らかに異なっていた。あれは本当に標本だったのか?との思いを抱いた豊は、今は都内で広告代理店に勤務する哲平に会いに行く。本作は事件に関わった登場人物ごとに章を変え、それぞれの視点で語られていく。この構成と先の読めない展開が読む手を止めさせなかった。宇佐美さんの本は今までに5冊ほど読んでいるが、今後も期待の作家です。2020/06/30
ふじさん
96
骨格標本が発掘されたという新聞記事をを見つけた家具職人の豊は、小学生の時に仲間と埋めた骨は何だったのかという疑問を抱く。豊は真相を求めて、幼馴染を尋ねる旅に出る。彼らの人生は、想像以上に重く、辛く、やり切れない話の連続だった。彼らが語った話から真相が少しずつ明らかになってくるが、真実は辛く悲しく切ないものだった。最後まで展開が読めず、予断を許さない方向に進む。辛い悲しい内容だが、最後には作家一流の遊び心も加わり、心が少しだけ癒された。 2021/09/04
アッシュ姉
94
小学生時代の冒険の旅の思い出に疑念を持った主人公が真実を知るために幼馴染を訪ねて回る。真相が解き明かされていくごとに心までほぐれていく。いい意味で宇佐美さんらしくない展開で総じて良かったが、探り探り途切れがちに読んだせいか、すっきりしないところが残った。(作中のご本人には違和感、のぞきに通い続ける心理は違和感どころじゃない)2021/02/09