内容説明
存在の孤独と愛の倦怠のただ中にある「現代の生」。……そのこわれてしまった姿を、乾いた抒情のうちに残酷に啓示して、芥川賞を受けた「三匹の蟹」。それに、三部作〈構図のない絵〉〈虹と浮橋〉〈蚤の市〉より成る、もの憂さ漂う青春への訣別の詩「青い落葉」を収めた、大庭文学の不朽の名作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マサキ
9
気になる三匹の蟹?日本人としてのアイデンティティ、妻として社会から求められる自分、枠からはみ出そうとする私?的確な心理描写と皮肉かつ詩的な文体もあって、解釈の幅もある。つまりうますぎる「三匹の蟹」。そしてその芥川賞受賞作が色褪せて見えるくらいの熱量を持った併録の「青い落葉」。複数の男の間をさまようサキ。社会に対する強烈な批判は、愛憎入り混じる男にも離れ難く及ぶ。既存の枠組みに対する抵抗、その枠組みに自らが存在する嫌悪。求められる自分、求められるものを演ずる自分。批判は熱量を帯び青春は少しも終わっていない。2020/02/06
tenchi
1
「三匹の蟹」は芥川賞受賞作品ですが、あまりその良さは理解できませんでした。作者の海外生活の影響が多少ともあると思いますが、表面的に上滑りする会話の底知れぬ孤独感、虚無感のようなものを強く感じました。しかし、そこから先へは入って行けません。ブツンと糸が途切れるように唐突に終わる結末など芥川賞審査が満場一致の絶賛を受けて決まったというそのキモのあたりが私には未だわかりません。むしろ「青い落葉」の若者が持つ疎外感や苦悩、自由恋愛や結婚への期待や失望など常に両極の狭間でもがく青春の最終章に複雑な共感を感じました。2015/05/04
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