ちくまプリマー新書<br> 病魔という悪の物語 ──チフスのメアリー

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ちくまプリマー新書
病魔という悪の物語 ──チフスのメアリー

  • 著者名:金森修【著】
  • 価格 ¥660(本体¥600)
  • 筑摩書房(2020/05発売)
  • ポイント 6pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480687296

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内容説明

料理人として働いていた彼女は、腸チフスの無症候性キャリアとして、本人に自覚のないまま雇い主の家族ら50人近くに病を伝染させた。「毒婦」「無垢の殺人者」として恐れられた一人の女性の数奇な生涯に迫る。

目次

はじめに
ある料理人の運命
料理を介した死?
主人公の名前
個人と全体の利害対立
歴史のなかの「善と悪」?
悲しみという感動
基礎資料
第一章 物語の発端
事件以前のメアリー
チフス患者の発生
賄まかない婦ふの「履り歴れき」
最初の接触
衛生局への依頼
公衆衛生という権力
ソーパーとメアリー
ノース・ブラザー島
治療の試みと検査
命名
最初期の社会的反響
第二章 公衆衛生との関わりのなかで
腸チフス
チフスと戦争
チャールズ・シェイピン
腸チフスの感染原因
攻撃的公衆衛生
硫黄燻蒸と蒸気殺菌
「病気の汚物理論」の批判
周辺環境から個人へ
健康保菌者の危険性
健康保菌者という概念
這いまわるキャリアたち
小僧っ子ジンの死
衛生局のパニック
穢の街
文化的錯綜のなかの囚われ人
第三章 裁判と解放
法的な問題
「チフスのメアリー」の露わな登場
ある判例
オニールの問いかけ
メアリーの主張
孤軍奮闘のメアリー
判決が下る
やや唐突な解放
第四章 再発見と、その後
自由になって
恋人の死
婦人科病院での発見
風向きが変わる
キャリア・リスト
有名なキャリアたち
メアリーの再検査
隔離の必要性は?
歴史の吹ふきだまりのなかで
仕事に就く
一日旅行
小さな宇宙
卒中の発作
葬式
第五章 象徴化かする「チフスのメアリー」
一般名詞化するメアリー
勝ち馬に乗る歴史
髑髏とフライパン
小説のなかのメアリー
象徴化する「チフスのメアリー」
おわりに
エマージング・ウイルス
エイズ
都市伝説
邪悪なゼロ号患者?
繰り返されうる構図
一人の人間がつむぐ歴史
主要参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

72
自覚症状はないのに突然、病原菌をまき散らしているとされ病院に閉じ込められたら。多くの新型コロナ陽性者が同じ目に遭っているだろうが、加えて死者が出たため毒殺者扱いされたら。解放を求めれば大騒ぎになるに違いない。メアリー・マローンはそんな立場に立たされ、後半生を隔離されて過ごさねばならなかった。1世紀前の出来事だが、当時の人びとを笑えない。現代でもひとりの人権や自由よりも大多数の安全安心こそ大切という世論の前に、人権擁護派も沈黙するだろう。コロナの致死性が高ければ、世界はメアリーたちであふれていたはずなのだ。2020/10/06

♡ぷらだ♡お休み中😌🌃💤

65
新型コロナウイルスの感染拡大を受け緊急復刊ということで手にとった。約100年前のニューヨークで、腸チフスの無症候性キャリアであったために、50人近くの人を感染させたメアリー。離島に25年余り隔離された生涯を追う。本書は「社会に住む不特定多数の人たちの命を救うためなら、1人の人間、または少数の人間たちの自由がある程度制限されても仕方のないことなのか」と問いかける。個人の自由と全体の福祉とをどのように調停したらいいのかが難しい。ちくまプリマー新書は学生対象に書かれたシリーズなので簡潔で非常にわかりやすかった。2020/05/22

アカウント停止

57
様々な境遇が重なって悪の象徴とされてしまったメアリー。100年の時が経た今も、当時と何も変わらず、差別や偏見はなくなっていない。著者が言うように「一人ひとりの人間を大切にすること。これは、当たり前のようでいて、実は本当に難しいことだ」からだと思う。「もし、あるとき、どこかで未来のメアリーが出現するようなことがあったとしても、その人も必ず、私たちと同じ夢や感情をかかえた普通の人間なのだということを、心の片隅で忘れないでいてほしい」と著者は訴える。公衆衛生は時には巨大な権力となる。一番恐ろしいのは人間社会だ。2021/02/27

こばまり

50
公衆衛生上の観点から個人の行動が制限されるのは、withコロナの時代を生きる我々には理解できるが、未発症のキャリアとして20世紀初頭を生きたメアリーの混乱は如何ばかりであったかと思う。これまでアイコンとしての存在であったが初めてその人生を知った。2023/08/27

くさてる

42
まさにいま復刊されたのも納得の内容。腸チフスの保菌者であり、有能な料理人でもあったメアリーという女性の生涯は、公衆衛生と人権という問題を真っ向から見据えた内容になっている。本人は健康で生活に不自由ない保菌者は社会でどう生きるべきだったのか。大きな問題の中に飲み込まれてしまう個人の尊厳とは。大事な問題を扱うのにふさわしく冷静な語り口ですが、ジュニア向けの本でもあるので、分かりやすく読みやすいです。おすすめです。2020/05/13

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