内容説明
奨学金免除の為しぶしぶ刑務所の医者になった是永史郎。患者にナメられ助手に怒られ、憂鬱な日々を送る。そんなある日の夜、自殺を予告した受刑者が変死した。胸を きむしった痕、覚せい剤の使用歴。これは自殺か、病死か?「朝までに死因を特定せよ!」所長命令を受け、史郎は美人研究員・有島に検査を依頼するが――手に汗握る医療ミステリ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
utinopoti27
180
奨学金返済免除のために、しぶしぶ刑務所の矯正医官となった青年医師・是永史郎。ある日、彼の前に受刑者として現れたのは、かつて家族を棄てて姿を消した、ろくでなしの父親だった・・。ミステリ風の味付けはあるものの、本作は、医療行為を通じて、受刑者たちと向き合いながら成長する、青年医師を軸とした人間ドラマだ。犯罪被害者の苦悩、介護問題、受刑者と家族の確執等々、重いテーマでもサラッと入ってくるのは、卓越したリーダビリティがあればこそ。ただ、父親との関係が中途半端なまま終わるのは、続編があるから?気になるところではある2020/12/10
KAZOO
175
初めての作家さんですが表題からするとあまり話題にならないところの医療に関する物語と思いましたがミステリーでした。奨学金返済免除のために刑務所の医者になった主人公ですが、かなり患者たちや医療の助手が手ごわく苦労する様子が見られます。そこで受刑者の変死があったり、あるいは主人公の身近の人物が登場してきたりします。かなり薬や医療の知識がないと書けない話だという気がしました。このような分野でのミステリーもあるのですね。2024/01/22
名古屋ケムンパス
141
思わず唸る快作でした。著者が医師であると確信してしまうほどの緻密さです。主人公の是永史郎が恵まれない境遇のなかで手にした医師の資格。でも奨学金免除のために神経内科医に進むことなく刑務所常勤の矯正医官(プリズン・ドクター)になりました。彼の知性は患者が受刑者であったしても次第に輝きだすのです。不埒な父と病に侵された母との愛憎に心を痛めながらも、更生する人の心に期待を寄せ続ける若き医師に感動を禁じえません。2025/01/10
おしゃべりメガネ
119
ガッチリとハマり、ほぼイッキ読みでした。北海道の千歳にある刑務所を舞台にした医者の話です。まさか北海道を舞台にしてるとは知らず手にとりましたが、ミステリーとしてはもちろんドラマとしても一級品な素晴らしい作品です。奨学金免除のため、本意ではなく刑務所内での医者を務めている「史郎」。大学時代の優秀な仲間達にサポートを受けながらも、なんとかやっています。そんな彼が診察する患者は当然、受刑者であり、それぞれにあらゆる事情があります。考えさせられるコトも多々ありシリアスな展開ながら、キモチが救われる作品でした。2025/02/07
みかん🍊
109
奨学金返済免除の為刑務所で医者として働き始めた史郎、母子家庭で育ててくれた母親が若年性の認知症になり介護をしながらの勤務、薬を貰おうと詐症の訴えをする受刑者の対応や不可解な病気など問題は山積みも、ここではキャリアを積めない専門の仕事をしたいと思っていたが同期生や彼女周りの人々にも助けられながら、病気だけでなく背景を見ながら矯正の手助けをする刑務所ドクターの仕事にやりがいを感じ始める。塀の外と内とは紙一重、一つのきっかけで犯罪者となってしまう事もある、正義と信じ犯す犯罪の方が止められずに罪を重ねてしまう。2020/07/10