内容説明
テレビ東京で不定期放送されるカルト的な人気番組「ハイパーハードボイルドグルメリポート」。“ほかじゃありえない”内容が話題の同番組を企画・取材・演出までほぼ一人で手がけたプロデューサー・上出遼平氏の初著書。番組内に収まりきらない世界の現実を「人が食う」姿を通じて描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆいまある
128
興味本位で読めるような軽い本じゃない。かつて人を殺して食べたリベリアの少年兵が今は何を食べているかに始まり、台湾マフィア、ロシアの宗教団体、ナイロビのゴミ山で暮らす少年で終わるルポタージュ。作者が若いからできたのか、無限に思える体力で、上辺だけの綺麗事で終わらず、命懸けでギリギリまで深く潜入する。家族と離れたった一人ゴミの中で暮らしても、人は誰かを求め、誰かと繋がろうとする。想像を超えた貧困を目の当たりにして胃にどすんと来た。消化するのに時間がかかる本。この作者の次回作が待ち遠しい。2020/06/14
k5
75
ちょっと鬱々としているので、エネルギーをもらおうと思って読み始めました。やっぱりアフリカいいなあ。カロリーの高そうな飯に元気をもらえますし、この手の企画の宿命ともいうべきエクスプロイテーションに書き手が自覚的なのも好感が持てます。ただ圧倒的にリベリア篇、ケニア篇がおもしろく、台湾篇、ロシア篇は弱いなあ。北朝鮮国営レストランはモスクワにもあって駐在員が普通に呑み会してましたし。(もうないらしいけど)。あとは著者が探偵ナイトスクープの構成作家みたいに闇落ちしないことを祈るのみです。2020/09/22
キク
64
帯で田原総一郎と、King Gnuの井口が絶賛している。テレ東深夜の異色のドキュメンタリー番組の書籍化。何回かテレビ番組を観たことがあるけど、世界のヤバいところに出かけて行って、一緒にメシを食う。「食卓には文化、宗教、経済、地理気候、人間を取り巻く有象無象があわられる。善悪を超えて、人は食う。生きるために食い、食うために生きる。人の全てがその日の「飯」に繋がっている」という精神で、元少年兵やマフィアや娼婦やカルト集団やゴミ山で生活する孤児達と食卓につく。まさに「ハイパーハードボイルドグルメリポート」だ。2022/05/21
猿吉君
62
突撃取材の極致を感じる濃密な文章、悲惨さよりも「食べてみたい!」と思わせる文章力に唸りました。①体を張り過ぎな突っ込みぶり、マジでヤバいのでこのスタイル続けるといつか大変な事に。②過激なエピソードほど面白い、そこをわかってより過激に。③とはいえカルト宗教とかのエピソードはいらなかったかも。④最後のケニアのエピソードはさすがにやるせない気持ちになりました。⑤テレビ放送だと縛りが多いから今後はネット系で活躍して欲しいな。点数85/100→読んで損なし、日本人でここまで踏み込んだ取材する人はまれだと思いました。2021/01/14
空猫
39
テレビ番組の為の食レポ。けれど平和ボケの頭にガツンとやられた。日本では絶対に目にできない限界飯だ。 リベリア:元少年兵達の廃墟飯「(貧しくて)食事は一日に一回」「売春一回の値段は一食の料金」。台湾:マフィアの高級中華コースと、人骨を使って刀を作る職人宅の家庭飯。ロシア:北朝鮮国営食堂での激うまキムチ、カルトの町の自給自足のベジタリアン飯。ケニア:ゴミ山スカベンジャー(ここではゴミを漁って生活する人への蔑称)の飯。どんな劣悪な場所の飯でもどれも美味しそうなのがスゴイ。タイトルに偽りなし。2022/08/14