内容説明
「俺たちは使い捨て」「日当6000円」。命の危険を冒しながら福島第一で働く原発作業員の姿を報じ、話題を呼んだ東京新聞連載の書籍化。作業員の被ばく線量の現実、緘口令、突然の解雇……。東電や政府発表からは見えてこない現実のイチエフ、9年間の記録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
104
私は事故後、一度だけ福島第一に入った。東電さん幹部からの説明を聞きつつ感じた違和感が、このルポで見事に氷解する。下請け収奪の中で「自分の存在は線量だけなのか」と嘆く作業員の嘆息、東電公式発表の欺瞞、「絆」という言葉の嘘っぱち、民主党政権による「事故収束宣言」のペテン、嘘で塗り固めた五輪招致、「おもてなし」ではなく全てが「お・も・て・む・き」、「コントロールされている」のは「状況」ではなく「情報」。名もない作業員たちからの9年間の地道な取材を記録した大学ノートが179冊。これこそ真のジャーナリズムだと思う。2021/06/06
Shintaro
60
本作や『プロメテウスの罠』などは記録として残しておく必要がある。一方、著者の片山夏子は東京新聞の記者なので「東京新聞史観」にとらわれている。その史観とは、作業員たちは何重もの下請構造からピンハネされ、劣悪な環境で多量の線量を浴びながら体を壊してゆく。家族は崩壊し、子供はいじめられるというステレオタイプなものである。僕の立場は竜田一人『いちえふ』に近い。彼らのおかげで現在ようやくアンダーコントロールに至った。福島の若者たちが続々と廃炉事業に加わっている。それは福島の大地を再び人間の土地に取り戻すためである。2020/07/17
壱萬参仟縁
47
このことは何年前の話だったのか? という読み方ができる。1年おきに、それぞれの事故、がん、白血病、政府や東電の責任問題が顕在化してくる内容だからだ。特に驚くのは、がんと白血病の認定基準が異なるということだ。放射能由来の病の認定基準の明確化、透明性を求めたい。2020年はマスクで覆われた日本人だが、既に、事故の9年前から全面マスクに覆われていた作業員を思うと、その汗のすごさから、コロナ対策マスクなんてまだ序の口と思える。また、東電による事故を事象に、汚染水を滞留水に、原発用語として言い換え(2021/03/14
きみたけ
37
東京新聞連載の「ふくしま作業員日誌」に大幅加筆・修正した本。460頁に及ぶ9年間分の日誌の読了にはかなり時間がかかりました。原発の高線量下での作業が日給8千円、命を削っての仕事の代償としては安すぎ。家族と離れた暮らしの中、単身で懸命に作業する姿勢に心打たれました。また、現場の作業が政治の動き(現場視察、総選挙など)に振り回され、死亡事故が起きても東電責任者から事故の説明も黙祷もない、トイレ休憩もなく違法残業し放題、人間扱いされない、まるで奴隷のような扱い、、 読んでいてとてもやるせない気持ちになりました。2021/03/05
ロビン
27
現在東京新聞の特別報道部に所属している著者が、9年もの間福島第一原発の作業員の方たちに取材した談話に、原発廃炉作業や訴訟などの原発関連の動きを併せてまとめた労作。立場の弱い下請けの作業員の方たちは仕事を失うことを恐れて被ばく線量をごまかしたり、出来レースのアンケートを書かされたり、労働組合を作ることもできずに不安定な雇用形態のもと「使い捨てられて」いる。国や会社側が放射線の影響を否定できない場合は被害を認め補償や賠償をするあり方に変えるべきとあるが、その通りだ。日々現場で作業する方たちに思いを馳せたい。2021/04/03
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