内容説明
大阪立売堀で機械器具の会社を営む橋田は、人生最大の危機に直面していた。20年をかけて築き上げた会社が詐欺にあい、倒産寸前にまで追い詰められていたのだ。もはや金策も尽き、旧知の同業者に、愛人の秘書・由美子を差し出すほかに道はなかったが……。男達の欲望の間で生きる薄幸な女を描いた表題作等、社会の歪みの中で蠢く人々の闇をあぶり出す傑作7編!!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kiiseegen
9
黒岩ミステリー短編を 7つ 復刻で読めるとは嬉しい限り。昭和ミステリールネサンスシリーズの 5冊目らしいが、いやぁ面白かった...西成ものをもっと読みたい...。2019/12/17
JKD
7
昭和の匂いがプンプンする時代のドロドロ色恋事件の短編集。住吉神社とか今宮あたりのリアルな情景描写や、当時の夜の世界などノスタルジックな雰囲気を楽しめました。2020/01/13
鈴子
6
図書館で予約して借りた。閉架した本で表紙も無くなり、紙も黄茶になり、当時のフォントは細く、夜の電気スタンドでは、まぁなんと読みづらかった。ただ、こういった文庫本の持つ雰囲気と昭和の男女の話が松本清張ぽくて、なかなか良かった。女性の話言葉が気取っている感じで、当時の人って、実際こんな風に会話してたんでしょうかねぇ。2021/02/17
鷹ぼん
3
あっさり目の黒岩作品集。おとなしい作品をあえて集めたのかな?と思えるくらい。『青い火花』、『双恋の蜘蛛』、『檻を出た野獣』が好み。中でも『檻を出た野獣』からは、幼いころの記憶の片隅に強烈に焼き付いている舞台となった地域の情景そのまんまの描写で、物語を生々しく感じさせる。やはり黒岩重吾に求めるのは、こうした大阪の「枠の外」「底辺の底辺」で蠢く男女の物語かな。この短編集は「企業がらみ」の話が多く、その後の作品傾向への転換期とも思える。黒岩作品には復刊してほしい作品が山ほどあるので、各社、掘り起こししてほしい。2022/08/11
しい太
3
扶桑社の昭和ミステリ秘宝が超メジャーなタイトルを揃えていたのに対して、こっちの叢書は本格、社会派という括りからは零れがちな(というか自分が殆ど知らない)ラインナップで、企画者の志を感じる。昭和30年代の世俗が当時の男女観込みで活写されている時点で興味深く読めるのだが、犯罪動機の時代性がかなり強いところも印象深い。漠然と予想していたよりはトリッキーな作品群で、ご都合主義に流れない峻烈な人間ドラマも面白かった。2021/06/05