内容説明
跳べ、若軍鶏(わかしゃも)よ! 息子や弟子たちの成長と旅立ちを見守る日々…。七年の歳月が過ぎ、齢(よわい)五十四となった園瀬藩の道場・主岩倉源太夫。だれにも避けることのできぬ“老い”を自覚しつつも、かつて退けた剣士の挑戦を再び受けて立つ。挑戦者の註文は「真剣で」だった―(『歳月』)。道場を開いて弟子を持ち、後添いにみつを娶って、思いがけず子を得た源太夫。息子の成長と旅立ち、弟子の苦節と克服を見守る、逃徹した眼差しの時代小説4篇を収録。軍鶏侍シリーズ新展開の第1弾!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ベルるるる
19
あれから7年。子供達も成長。そして源太夫は老いを自覚するようになっている。権助は30年続けてきた軍鶏の世話を亀吉に任せている。後継者というのが、この新シリーズのひとつのテーマなんだろうね。2018/10/12
タツ フカガワ
13
このシリーズで忘れられない作品が3話あって、天才剣士大村圭二郎が父の仇討ちをする3作目『飛翔』の「巣立ち」と、市蔵が実父を殺したのが養父源太夫だったことを知って懊悩する4作目『巣立ち』の表題作、そして東野才二郎の恋愛小説のような5作目『ふたたびの園瀬』の表題作で、どれも軍鶏道場から巣立っていく物語でした。本書の表題作も、9歳のとき源太夫に画才を認められた正造の18歳で絵師としての巣立ちを描いたもので、とても味わい深い作品でした。2019/06/20
qoop
9
軍鶏侍の新シリーズ開幕編。相変わらず剣戟あり、軍鶏の決闘あり、家族や師弟との絆あり…と充実した内容だが、老境に差しかかった主人公の心境を書いて旧作とは異なる面も見せている。この時間経過は、幾つになっても変化し成長する姿を写そうとする著者の思惑がより明瞭に出す上でも効果的だろう。物語に浸りながらも、ご存知ものの安心感をあえて排することで緊張感を生むことに成功しており、著者の筆力と構成力を楽しめる。次巻以降も大いに期待。2018/07/14
コニタン
8
野口卓の軍鶏侍シリーズが、いちばん面白い。源太夫も老い感じる54歳、私は老いをもっと感じる60代2018/07/19
Mc6ρ助
7
久しぶりの軍鶏侍、年寄りには馴染みの背景の元に語られる物語は受け入れやすい。とはいえ、一番こころを打つのは、はじめて登場の藩のお抱え絵師の半生を描く表題作。シリーズ再開ならば次作が楽しみなことだ。2018/10/15