内容説明
ガンとの闘いには、休みはない。気の遠くなるような闘いだが、気管支ファイバースコープの完成、発ガン物質の究明、肝臓ガン手術の連続成功など、その研究と診断治療法は、着実に前進している。国立がんセンターを舞台に、日夜、治療と研究にとりくむ人びとの苦闘と成果を描いた傑作。講談社ノンフィクション賞受賞作。<上下巻>
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
里季
74
国立ががんセンターが設立され、医師たちの研究は進化していく。発見するガンから治すガンへの戦いの様子が下巻では繰り広げられる。けれどなお、がん告知はまだまだの状態で、癌に倒れた医師たちへさえ告知をしないどころか、察知されないようにカルテを2部作ったり、替え玉の画像を用意したりしている。全くもってその労力は無駄だと思うのだがどうだろうか。さて、日本人に多かった胃癌の発見治療は一応の進歩を遂げたが肺がんになるとなかなか難しいのであった。私の夫はは胃癌に倒れたのだが、やはり、発見が遅く、診断にも時間がかかった。2017/11/13
KEI
31
国立ガンセンターを主な舞台に癌が治る病となる様に、日夜努力する医師、技師、看護師、器具の開発に献身的な町の職人について書かれたノンフィクション。下巻では早期ガン=治る癌 の診断、早期発見の為に身を削る様に研究に励む医師達の姿に頭が下がる。胃カメラから内視鏡、CTなどの医療器具の進歩、治療手技の研究も詳しく書かれていて、その取材力に驚く。発行から30数年、癌治療に隔世の感があった。力作。2017/10/02
hatayan
13
下巻では、国民的作家の吉川英治、所得倍増を掲げた池田首相、がんセンターの立ち上げに関わった医師がガンに倒れます。当時告知はタブーであり、組織を挙げて世論や患者を欺くための工作を行わざるを得ない時代でした。 世代を越えてガン撲滅への思いは受け継がれ、ガンを人工的に発生させる実験の成功、肺や胃から直接細胞を採取できるスコープの開発など、これまでの努力が実を結んでいきます。 がんセンターの知見を広く普及させる考えのもと、がんの早期発見、生存率向上への取り組みは続きます。 熱い昭和を感じることのできる作品です。2018/10/14
まさげ
9
ガン撲滅のため戦う医師の姿が淡々と描かれているノンフィクションでしたが、とても読みやすかったです。初代の院長にカリスマ性を感じましたが、読み終えたところ、登場する多くの人々がヒーローでした。仕事、日常生活で困難に対して決して諦めてはいけないことを学びました。2025/07/30
katta
3
昭和54年の講談社ノンフィクション賞受賞作。昭和37年、築地の旧海軍軍医学校のあとに出来た国立がんセンター。ここを舞台に昭和50年代初頭までのガン治療のクロニクル。緻密な取材と冷徹は筆致で戦後から高度成長期までのガンの存在を綴っていく。学閥に縛られず、創意工夫をしていく医者の姿に好感を持つ。2009/05/20