内容説明
二つの世界大戦は社会のすべてを動員する総力戦であり、そこで重要だったのが経済だった。本書では総力戦下の経済学者たちの言説がどんな役割を果たしたか、戦後にどう影響したかを追う。英米独日の経済抗戦力を経済学者はどのように判断したのか。経済学はイデオロギー対立のなかにどのように巻き込まれたのか。マルクス経済学、さらには西洋思想への対抗手段とされた日本経済学とは。第32回石橋湛山賞受賞作に最新の研究成果を加筆。
目次
まえがき
第一章 河上肇――戦時下の経済思想の「先駆け」
第二章 陸海軍と経済学者
第三章 経済新体制をめぐって
第四章 思想戦のなかの経済学
第五章 「近代経済学」とは何だったのか
あとがき
新版のあとがき
人名索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
74
戦前戦中において経済学が日本でどう扱われてきたか論じたもの。驚いたのは、戦中においても洋書の文献が翻訳され読まれていたという事実。軍的イデオロギーに屈することなく西洋の知識が流入し学ばれていたことに、学者たちの柔軟性を感じ、ひとさじの希望を感じた。本書で初めて知ることがとても多かった。 2020/02/24
ころこ
24
理論的な対立ではなく、地位と関係が中心です。戦時下は経済的な判断よりも軍事的な判断が優先され、経済学が状況に役立つことを求められる学問であることを鑑みれば、政治の文脈で学者がいかに身を処すべきかというジレンマが描かれることに意味があります。戦後「マル経」以外は「近経」と呼ばれたのかという問いは、戦後のある時まで「マル経」が隆盛だったのかと反転でき、当時の経済学者のような著者の書くことの困難さは、明快でない筆致を生んでいて読み応えがあります。ある部分は価値観に依存せざるを得ない経済学の原点をあぶり出します。2020/04/20
やまやま
12
始点を河上肇に置き、倹約によって社会を潤す、贅沢をせずに社会に尽くせ、社会が豊かになれば自己も豊かでしょうという思考モデルと歴史が紹介されています。人間は性善で、社会に対する貢献は望ましいという価値観を道徳として持っていたから魅力があったのでしょう。河上後に紹介されている人物は多岐にわたります。マルクス主義に対抗するため市場経済の優位性を志向する一方で、統制経済の推進は市場をゆがめることで最適ではないという矛盾を繕うために様々な言論があります。高田保馬と荒木光太郎は印象が強かったですが、他も興味深いです。2020/07/24
CTC
11
今月の中公選書新刊。同シリーズリニューアル第1弾という事で、旧版は11年刊。「特に秋丸機関について全面的に改訂」した、という事でその部分は期待に違わぬ読書となった。しかし…ざらっと章立てと雰囲気を確認して覚悟して臨んだ訳だけれども…タイトルの通りの、陸海軍から離れた経済学の歴史を題材にした3章以降は、私には難しかった。。ここまで購入した本で全く頭に入ってこないというのは大学の教科書以来かなぁ、自分の興味の幅のなさを反省(苦笑)。。2020/01/31
バルジ
7
昭和戦前期の経済学者にスポットを当てる良書。政治史がメインで扱われることの多いこの時代を経済学者の動きと政治史と絡める事により描く。本書は戦時下の経済思想の先駆けとして河上肇から語る。一版に社会主義の側面の注目される河上だが、第一次大戦を通じて後の経済統制に繋がる論点を提示している。その後河上門下の柴田敬、山本勝市がともに統制経済を巡る議論を異なる立場から主導していく姿は何とも因果である。戦時下の経済学は学問的主張が直に政策に反映されることもあり政争の具となっていく。 学問と政治を考える上でも興味深い。2020/01/26
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