内容説明
絶望的な児童虐待や親殺しはなぜ起きるのか。おそらく理由の一つは、甘やかされて育ったゆえに膨れあがった自己愛である。「なぜ子供は自分の言うことを聞かないのか」「なぜ親の面倒など見なければいけないのか」。しかし自己愛に満ち、己の安寧だけをひたすら考える人間が、生涯を安全・無事にまっとうできる保証はない。人はいつ何処で死ぬかもしれず、それゆえ「人はいつ死ぬか分からない」ということを後生に教えなければいけない。著者はこう記す。「戦争中と戦後の混乱期は、人間の外側を体裁よく覆っていたさまざまなものを剥ぎとってしまった。皮をむかれたアルマジロ、ミノから追い出されたミノ虫のように、地位や肩書や財産をむしりとられて、一個の裸の個人に還った人たちがごろごろしていた。ロビンソン・クルーソーのように、当時の人々は一人で何もかも作って行かねばならなかった」。東日本大震災を経た日本人は、まさにここに還るべきである。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
msugimo
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今春小学生になる娘との向き合い方を、再考するために読んだ一冊。子供のしつけ・教育は、親が最終責任者であること。それらを自信を持って行うためには、教える立場の親が、自律・自省・学ぶ姿勢を持ち続けなければ、子供に伝わらない。むしろ見透かされてしまう。著者の本は3冊目だが、読む度に反省させられる。2013/01/26
septiembre
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1975年の復刊。教育について語っている。親の最終目的は子供の自立。「人間が矛盾の塊だから教育も矛盾が生じるのは自然」という一文に妙に納得。2012/08/03
まゆまゆ
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自らを教育しない人に教育は無理だ。かといって自ら教育した人に教育されてもうまくいくとは限らないといった矛盾点から始まる教育に関するエッセイ集。1975年に初版された筆者のエッセイ集だと知ってビックリ。2012/02/23