内容説明
「デタッチメント」から「コミットメント」へ──村上春樹の創作姿勢の移行は、はたして何を意味するのだろうか。その物語世界はどのように深化を遂げたのか。デビュー以来の80編におよぶ短編を丹念にたどりながら、長編とのつながりをも探り出すことで、新たな像が浮かび上がる。下巻では、『ノルウェイの森』の大ベストセラー化を契機にもたらされた深刻な孤立と危機にはじまる「中期」の作品群を読み解き、そして、日本の戦後にとって節目となった1995年の二つの出来事を誰よりもしっかり受け止めた小説家の「後期」の転回を掘り下げる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
61
下巻を読み切るのにはそんなに時間がかからなかった。村上春樹という作家は、もしかしたら読者のためというより自身のために小説を書いている部分が大きくて、それが結果的に読者にフィードバックされているのではないか。そう思ってしまうほど、自己治癒的なテーマの分析があったように感じた。自分自身を掘り下げていかないと物語の源泉にはたどり着けない。その方法が読者への共感を生むということなのだろう。非常に納得のゆく、愛情あふれる評論だった。2019/11/09
ラウリスタ~
6
「レーダーホーゼン」分析がすごい。英語で読んだ授業参加者のレポートで「レ=女性器」であるという主張がなされ、加藤は驚く。フェミニズム第一世代とその娘の、女としての共感と娘として愛されなかった反発。上野らの村上=反フェミ批判に対し、村上がより深くフェミニズムを掘り下げていると示す。「沈黙」は、いじめ問題への関心から、全国の学校で副読本として読まれてきたが、加藤は批判的。村上の知性を持ってしても、「本物・偽物」という安直な二項対立(80年代の文壇からの総攻撃に対する個人的な恨みの表出)から脱げだせていない。2019/12/12
山ろく
5
感想でも紹介でもない。留学生への講義で英語テキストを使ったことがきっかけでも翻訳のアレコレが主眼なのではない。やれ、面白かったつまらなかった作者は何が言いたかったのかと読者は言うけれど「作品に込められたメッセージに作者自身も意識的であったとは限らない」として、いくつもの短編を年代順に追いかけながら長編との対応を探り、作者の個人的体験や時代背景に照らしつつ読解していく。私自身よくわからずに読み飛ばしていた(のだとはじめて気づいた)作品にあらためて意味付けをしていく文学評論の推論の大胆さと緻密さに驚かされる。2020/07/05
なつのおすすめあにめ
3
95年が「デタッチメント」から「コミットメント」へ転回した年、……という認識は実は違うのではないか。長編だけでなく短編も注意深く観察することによって、ここまで読解できるのかと毎回驚かされた。 『街とその不確かな壁』を加藤典洋ならどう読んだのだろう。2023/06/03
v&b
2
掟破りの逆順読みで、品川猿の章から読む。 感想は後ほど。2020/05/03
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