内容説明
就職活動がうまくいかず、気落ちしていた奈留美は、「働く人を探している」と聞いて谷中の小さな洋食屋を訪れた。その店「紅らんたん」は、厨房担当の男性と、自分の母よりもかなり年上に見えるのにキリっと若々しい女性とが二人で切り盛りしており、奈留美はアルバイトに入ることに。働き始めてみると、店の客は近くに住むお年寄りがほとんどで──。名物ハヤシライスと美味しいコーヒー、マイペースなお客様たちに癒される、静かな物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
65
お年寄りたちの憩いの場、「紅らんたん」にアルバイトとして飛びこんだ女性・奈留美の物語。人間関係がリアルで、特に千佳さんのときにはいい人、ときには毒をはらんだ意地悪さが垣間見える造形が実際にありそうな感じだった。ある程度の年齢にならないと感じられないこと、見えてこないことはたくさんある。奈留美にとってはこの上ない社会勉強になったはず。2019/10/13
野のこ
56
装丁からマスターとウエートレスの子がメインかと思ってたら、コーヒー担当の74歳千佳さんがキーパーソンだった!奈留美ちゃんがご年配のお客さんの悩みを自宅まで行ってお手伝いをしててバイトの子がそこまでするか!?と思ったけど、あとがきの濱野さんのお母さまの箇所を読んで印象が変わりました。高齢になるとともに起こる、親の介護や自身の病気などに優しく暖かなランタンを灯すよう。でも日中はランタンがついてないのと夜はたまに仮装パーティーをするのが気になりました。もう、マスターが謎すぎてよく分からなかった。年齢不詳だし!2019/12/19
よっち
42
就職活動がうまくいかず気落ちしていた奈留美が、美容室で話を聞き谷中の小さな洋食屋「紅らんたん」でアルバイトとして働き始める物語。店の客は近くに住むお年寄りがほとんどで、厨房担当の真崎さん・かなり年上の千佳さんとともに働く中で見えてくる、常連客たちの様々な事情。その年齢ならではの難しい人間関係が絡む問題の数々を、ぴりりと辛口な千佳さんの推理とそれをフォローする奈留美という役回りで解決してゆく展開でしたが、終わってみれば読後感の悪くない結末で、関連しているらしい『ことづて屋』シリーズがちょっと気になりました。2019/11/04
なな
25
初読み作家さんでした。タイトルと表紙イラストから想像していたストーリーとはだいぶ違いましたが、これはこれで楽しめました。最初の印象は二十歳そこそこの奈留美が働く環境じゃないように思えましたが、千佳さんや真崎さん、常連さんたちに可愛がられ、近所の問題に首を突っ込み、打ち解けていく様子に、心があたたかくなり、ほっこりした気持ちになりました。就職が決まったことは喜ばしいことですが、ちょっと寂しくなりました。奈留美にとって良い社会勉強になったと思います。2020/02/27
信兵衛
23
千佳さんが、心優しい上品な老女というより、辛辣で皮肉屋でもあるところが、スパイスの効いた短篇集となっていて魅力を感じます。2019/11/02