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内容説明
自由を尊重し、富の再分配を目指すリベラリズムが世界中で嫌われている。米国のトランプ現象、欧州の極右政権台頭、日本の右傾化はその象徴だ。リベラル派は、国民の知的劣化に原因を求めるが、リベラリズムには、機能不全に陥らざるをえない思想的限界がある。これまで過大評価されすぎたのだ。リベラリズムを適用できない現代社会の実状を哲学的に考察。注目の哲学者がリベラリズムの根底を覆す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
46
リベラル派の衰退の原因を探る為、ジョン・ロールズのリベラリズムを徹底検証する。リベラル派はパイの分配を唱えるが、他方で負担の増加はあまり言わないずるさを指摘しつつ、実は本来のリベラリズムは「パイが拡大する条件下」でしか成り立たないという。人口縮小でパイが縮小する日本では受け入れられなくなったのはそのためだと。民主党政権の誕生は団塊の世代が年金受給世代に突入、自民党政権のままでは受給が減るとの危機感が背景にあった、という見立ては興味深い。ただ、著者は否定するが、反リベラル本とみられるのは避けられないかなぁ。2020/01/29
yutaro13
22
リベラルを称する方々への胡散臭さから手に取ってみた本。個別には興味深い内容を含むが全体としては中途半端。著者によれば、リベラリズムはパイが拡大しているときにしか説得力をもたない点に限界がある。自分は反リベラリズムではないと何度も主張する守りの姿勢が著者のズルさ。リベラリズムを一方的に断罪するだけで、それを乗り越えてどう現代に活かすべきかに言及しないと反リベラリズムと言われても仕方ない。そもそもリベラリズムとはこんな新書1冊で限界を露呈するやわな思想だったろうか。何年か前に読んだ井上達夫氏の本を再読したい。2020/07/01
まゆまゆ
19
個人の自由を最大限尊重する立場であるリベラルの考え方は万全ではないことを語りつくす内容。リベラルの前提には社会的規範があり、その中でしか主張が認められない、という理由を同性婚と一夫多妻婚と近親婚から考えていくのは読みごたえがある。フェアネス(公平さ)を重視する点を評価しつつも、リベラルだけでは分配の元であるパイの拡大という社会的問題は解決できない。功利主義と全体主義の違いについての考察も考えるなぁ。2020/02/27
belalugosi6997
17
最も読みたい著者の一人。第一章を読み唸った、「良い、やっぱり萱野は良い。これは令和の一冊に…」。問題は第二章だ、確かに言い分は素晴らしく「ぐぅ」の音も出ない。今後、無責任なお花畑の感情的なロマンチストをねじ伏せるために使いたい。しかし、根本が間違えている。いや、ひょっとしてこれを「ダブルスタンダード」と言うのか?そうだ、そう言う事にしよう。これからは堂々と主張する。「同性愛者の結婚には反対です」と「自国民でさえ満足な生活が営めないのに、外国人に施し等今の日本にそんな余裕はない」そう、ダブルスタンダード2021/01/24
mazda
15
貧しい人にも平等に分配を、コンクリートから人へ、耳障りのいい言葉を並べるリベラリストですが、右肩上がりの時代であればいざ知らず、給料は変わらないのに税金、保険料を搾取される現代人が、その主張を受け入れることは絶望的でしょう。そう、リベラルの発言は、分配のパイが拡大しているときだからこそ成り立つわけで、いざパイが縮小するとリベラルこそ残酷な対応をする傾向にある気がします。3年間で800万人生まれた団塊の世代が後期高齢者になった今、現役世代はどこまで支えられるのか、本気で心配です。2022/12/06