内容説明
ヒトは心臓病・腰痛・難産になるように進化した!
複雑な道具を使いこなし、文明を築いて大繁栄した私たちヒトは、じつは「ありふれた」生物だった──。人体は「進化の失敗作」? ヒトも大腸菌も生きる目的は一緒? 私たちをいまも苦しめる、肥大化した脳がもたらした副作用とは? ベストセラー『絶滅の人類史』の著者が「人体」をテーマに、誤解されがちな進化論の本質を明快に描き出した、知的エンターテインメント!
序 章 なぜ私たちは生きているのか
第1部 ヒトは進化の頂点ではない
心臓病になるように進化した/鳥類や恐竜の肺にはかなわない/
腎臓・尿と「存在の偉大な連鎖」……
第2部 人類はいかにヒトになったのか
腰痛は人類の宿命だけれど/人類が難産になった理由とは/
一夫一妻制は絶対ではない……
終 章 なぜ私たちは死ぬのか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
158
心臓病になるように進化したとか腰痛は人類の宿命だとか、進化の過程で作られてきた人体構造についていろいろ語っているが、そもそもの大前提の生命のあり方の捉え方が面白い。「生きてる」ということは「エネルギーを吸収しているあいだだけ一定の形をしていて、時々同じものを複製すること」。進化とは単に変化すること、向上することではないし、生きることにも崇高な目的があるわけではない。(崇高な目的のため生きることはできるが、それは生きてる途中で各自が決めること。)ただ生きているだけで立派なもの。そんな生物はたくさんいる。2019/10/28
やいっち
99
読みやすく、カフェで気軽に読める。でも、示唆に富む。進化(論)の無方向性をつくづくと思い知らされる。原始的なものから高度な存在へ、単純で不便なものから合理的で優れた存在へ。右肩上がりの進化……なんて幻想に過ぎない。行き当たりばったりの進化。その典型の一つが人間という存在。言うまでもないが、大腸菌も人間も、それぞれが進化の突端にいる。そしてその両者が大腸などで危うい共生を辛うじて果たしているところに、つまり現に我々の身体の中において進化の妙が垣間見えるのが面白い。2020/03/31
trazom
88
生物学や医学に専門知識のない私には、書かれている一つ一つの説の学術的な信憑性を判断する能力はない。でも、驚きと知的興奮に満ちた一冊だった。心臓の冠状動脈の意味、体内で窒素を処理する工夫(アンモニアか尿素か尿酸か)、ミルクを消化できない大人、ヒトの犬歯が退化した意味など、「そういうことか!」と納得してしまう。ダーウィンが「進化は進歩ではない」と言うように、著者は、ヒトを系統樹の頂点に立つ特権階級のように思うことの誤りを指摘する。そこには、すべての生物が、生存闘争の中で必死に生きていることへの畏敬の念がある。2019/12/19
keroppi
86
「残酷な」というタイトルにひかれて読んでみた。人類の不完全な様を、進化論で説き、人類が優れている訳でもないと語る。それは、生存競争から生まれたものであり、進化するためには自然淘汰の「死」が必要であると。それぞれの解説が興味深く読めた。2020/01/13
活字の旅遊人
70
「はじめに」がSF 小説仕立てになっている。その後も生物系SFのネタ集であるかの如く、話が進む。前作『絶滅の人類史』を生物の進化にまで拡げて、人間って別に優れている訳じゃないよね、と教えてくれる。かなり分かりやすいし、面白い。こういう風に書ける(説明できる)人って、相当頭がいいなと思う。内容としては、進化の中間についての考察が特にためになった。終章では、進化、自然淘汰には死が必要なのだと。大きな視点にたてば、人間社会なんて気にしなくてもいいくらいだ。逆に、いや、だからこそ、その中での争いが虚しくもある。2021/06/03