内容説明
古代から、土木技術は社会発展の礎となってきた。日本各地の古墳や名だたる仏教寺院・宮殿建築を生み出してきた伝統的工法を、豊富な遺構の発掘成果とともに紹介し、中国・朝鮮半島の事例に大陸からの影響をたどる。政治的支配や外交、信仰と土木とのかかわりを手がかりに、人々がどのような社会を目指したのかを、古代の先端技術から照射する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
朗読者
18
考古学者らしく、土木技術よりは歴史や伝来の話が詳しかった。興味深かったのは、2014年に建て替えられた薬師寺東塔の基礎部の詳細調査結果。東塔の西側に不等沈下が起きていたこと、礎石の下に固めた土饅頭があったこと、礎石の表面付近の上層土を固く、その下の土を柔らかくしてあったことは知らなかった。これらは力学的には問題だらけで、そんな不安定基礎の上にあの薬師寺東塔が建てられていると知ったのはちょっとショックだった。2025/05/31
おらひらお
8
著者がこれまで執筆した論文を一般向けに分かりやすくまとめたものです。文章も平易で、著者の研究のとっかかりにはちょうど良いと思います。2017/11/09
イコ
5
土木技術の古代史という事で、古墳の作り方や版築について言及されている。土木と書いていたが、寺院などの地業工事について書いていたのが珍しく、なかなか興味深かったが論文を元にしているのでちょいと難しいところもあった。版築と古墳について調べたいならベストの本です。2019/07/21
六点
5
「モノをして歴史を語らしむ」考古学の真髄ともいうべき書物である。古墳築造の技術を読み解くことから古代日本の権力構造を導き出す事で始まり、版築の技法で大陸技術の流入ルートを読み取り、寺社の基壇の構造から古代の仏教受容のあり方を読み解く。精密な学問はここまでの事ができるのかと感動させられる。まぁ、何故か朝鮮の地名は何故か現代韓国語のふりがなが付いているのに、支那の地名は慣用によっていたりするところが、余計な事を考えさせられるのはご愛嬌と言うべきであろう。2018/02/24
翠埜もぐら
3
素人目で考古学とは「遺物を考察するもの」感が強いのですが、遺物を包むすべてが対象であることがよくわかりました。近年遺跡に残る液状化などの痕跡調査も盛んですね。構築物の形だけでなく制作方法などから、弥生時代以降の東アジアの文化交流を考察でき、今後の遺跡の見方に幅が出て楽しくなりそうです。ところで古墳の制作方法に東西差があるそうで、これは政治体制の問題ですが、東と西って文化的に違いますよね。今も結構大きいと思うのだけれど。地政学的な問題なのか、環境的なものもあるのか。東夷の末裔としてはこの辺が結構気になる。2019/02/13
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