内容説明
映画を学びにひとり京都大学にやってきた私がであったのは、どこか不気味な大家さん、まっ暗な部屋のクールな雨女、さびれた祇園のカラオケ店の、ちょっと変わった常連客。それぞれに孤独を抱えて生きる京の人々との出会いを、注目の女性監督が綴るエッセイ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハイランド
84
台湾から京都に留学してきた作者が、様々な人と出会い別れる。京都は片手の指で足りるほどしか訪れたことがないが、なぜか懐かしい(森見登美彦の小説による刷り込みか?)人と触れ合いながらも「いつもひとりだった」というタイトルは、異邦人としての孤独を心に抱えていたからか。京都の大学に行っておけばと、この歳になって後悔(笑)。作者は台湾のアニメ映画「幸福路のチー」の監督で、そこから興味を持って本書を読んだのだが、この映画が実に素晴らしい。「おもいでぽろぽろ」や「マイマイ新子」が好みの方には是非観ていただきたい作品。2021/02/06
南雲吾朗
62
台湾のアニメ映画「幸福路上」の監督である宋 欣穎氏が京都に留学していた頃を綴ったエッセイ。なかなか面白い。留学生ならではのモノの捉え方が斬新。私が知っているのと違った京都を垣間見れた感じ。京都のディープさが改めて感じられる。まさに、魔都である。「佐藤先生の椅子」と「吉田寮のこと」が凄く気に入った。京都という町はこういう人たちが暮らしているから楽しいんだなぁ。2020/01/28
はる
56
爽やかな読後感。台湾の女性映画監督が留学のためにやって来た京都での日々を綴ったエッセイ。京都の町の風情と共に、彼女の優しい人柄が伺える素直な文章が瑞々しい。彼女が出逢う京都の住人たちや留学生の友人はなかなか個性的だけれど、彼らとの距離のとり方がいいんです。銭湯でのエピソードが微笑ましくて好き。2020/01/22
ぶんこ
48
京都大学に留学していた台湾人のソンさんによるエッセイ。「ひとり」とありましたが、色々な人との温かい交流がありました。ただ偏見かもしれませんが、台湾の方々による過剰とも思える親切に遭遇してきたからか、あの濃厚なぁ人付き合いをしてきた人からすると、京都での人との交流は物足りなかったのかもしれないと気づきました。「五条楽園」と「銭湯」は行ってみたくなったのですが、もう面影が無くなっているようで悲しいです。古い花街の佇まいには惹かれるものがあるので、訪れたくなる気持ちに共感しました。2020/03/10
rosetta
30
多分2006年頃京都に留学してきた、後に台湾のアニメ作家になる女性のエッセイ。台湾映画っていつもどこかに静かな孤独があるような気がする。京都にいたのは2年ほど。このタイトルだとずっと孤独を抱えて打ち震えていたようなイメージだが、ちゃんと日本人や留学生の友達もいてお茶したり食事したり話したり穏やかな学生生活を送っている。一人暮らしの基本はどうしても最後は部屋に戻って寂しさを感じるものだ。自分の学生時代も好き勝手に生活していたが部屋で一人になるとやはり孤独を感じたものだった。だから猫を飼ったのかな?2022/12/16