内容説明
人生の最後に食べたいおやつは何ですか――若くして余命を告げられた主人公の雫は、瀬戸内の島のホスピスで残りの日々を過ごすことを決め、穏やかな景色のなか、本当にしたかったことを考える。ホスピスでは、毎週日曜日、入居者がリクエストできる「おやつの時間」があるのだが、雫はなかなか選べずにいた――食べて、生きて、この世から旅立つ。すべての人にいつか訪れることをあたたかく描き出す、今が愛おしくなる物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kou
1478
おやつの日の度に、涙が止まらなくなり文字が読めなくなった。読みながら、何度も死生観について考えさせられた。自身だったら、おやつに何をリクエストするだろうか・・・正直、今は思いつかない。でも、食事全般で言ったら、「祖母が作ったロールキャベツ」になると思う。家族が、何度か再現してくれようとしたが何かが違っていた。ライオンの家でリクエストしたら作ってくれるだろうか。ケチャップに良く合う懐かしいロールキャベツを。って、これは本の感想じゃなく、一人語りになってしまったかな(汗)。2020/08/20
馨
1439
死がテーマの小説。ゆっくり堪能したくて毎朝少しずつ読みました。主人公雫の話もホロリときましたし、モモちゃんの話も短いけど泣けました。死後に遺された人たちに思ってもらえたり、実体がなくても遺された人たちを見守ったり先に逝った人に会えるなら死を恐れるなくなれました。私も最期はライオンの家のような場所に行きたいです。2020/01/03
鉄之助
1313
「匂い」に始まり「匂い」に終わる小説だった。瀬戸内の空気がおいしい、レモン島にあるホスピスが舞台。施設の責任者マドンナからの手紙の、”文字の匂い”を主人公・海野雫が吸い上げた場面から、物語の虜になってしまった。手紙の匂いでなく、文字の匂い! 物質としての手紙ではなく、それを書いたマドンナの人柄含め全てを受け入れる瞬間、のように思われた。毎週日曜日に施設で出される「ライオンのおやつ」。毎回、悲しい旅立ちが付きまとうが、決して寂しさだけでなく、前向きな気持ちにさせてくれる。小川糸マジックか? 堪能しました。2024/06/24
青乃108号
1298
相当に、考えて考えて言葉を選んで、大事に大事に一文一文書かれた、そんな印象を強く感じた本。これはおろそかには読めない、と思いながらつい引き込まれ、あっと言う間に読み終えてしまった。もし俺も癌になるような事があったら、抗がん剤なんか使わず最期の時間はホスピスで過ごしたい。今を生きていられる事の幸せをあらためて思う本。そして死ぬ事への怖さがほんのちょっと無くなったような気がする本。疲れた心に、沁みる本。2023/03/28
さてさて
1223
私たちは明日が当たり前に訪れる前提で物事を考えています。でも、それは決して当たり前のことではなく『明日以降が来ることを当たり前に信じられることは、本当はとても幸せなこと』そのことに気づきました。『私の人生のレールは、着々と死に向かって進んでいる。私はその事実を、人よりも少しだけ早く知ったに過ぎない』と雫が最後に見せた人生の輝き。とても重いテーマを”おやつ”という身近なものを象徴的に絡ませながら見事に描き切った小川さんの傑作。涙が止まらないその結末に、人のあたたかさと、生きることの喜びを感じた絶品でした。2020/12/05
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