内容説明
1989年の天安門事件は、現在の中国の「姿」を決定づけ、世界史に刻まれた大事件だったにもかかわらず、殺害された人びとの名前や人数のほか、北京のどこで、どのようにして「鎮圧」が行われたのか、なぜこのような悲劇に至ったのかなど、その詳細は未だ明らかになっていない。
本書は、「六四天安門」にかかわって懲役刑を受けた一般市民へのインタビューを中心に、著者自身のエッセイも加えた証言文集である。現場にいた者にしかわからない、細部にわたる生々しい目撃証言が次々に飛び出すばかりではなく、取材対象者たちがその後の人生において経験した差別や官権の横暴、刑務所内部の実態、また人権がないがしろにされる社会の恐ろしさなどが白日の下にさらされる。
事件直後はもちろん習近平体制下の今に至るまで、中国社会においてこうした取材や聞き書きをする(またはそれに応じる)こと自体きわめて危険な行為であり、実際、著者はその過程で中国脱出を余儀なくされている。聞くのも、話すのも、書くのも、まさに命懸けの、門外不出のドキュメント! 序文=イアン・ジョンソン(ジャーナリスト)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
BLACK無糖好き
25
天安門事件に関する文献は、学生指導者や知識人といった「六四エリート」に関するものが比較的多い印象があるが、本書は市井の人々で天安門事件に関わり、反革命宣伝煽動罪や放火罪などで処罰された「六四暴徒」と呼ばれる人たちへのインタビューが中心。獄中での家畜のような扱いや激しい拷問の様子など生々しい話しに満ち溢れている。◆歴史の個々の記憶を記録し後世に残すのは重要な行為。著者がこれらのインタビューの記録を抱え、ベトナムとの国境を超えドイツへの亡命を果たせたからこそ、この歴史の一端を知る事ができる。2019/12/19
ようはん
16
天安門事件で暴徒として戦車焼討ち等に関わり逮捕された人々へのインタビュー集。事件当時に行われた暴力の血生臭さもそうだが、逮捕されればまずは警察らのリンチは当たり前で劣悪な獄中環境と過酷な拷問が複数人から語られているのが印象深く辛い。2020/06/21
koji
16
肺腑を抉られ、夢にうなされ、寂寥を感じ、数年に一度あるかないかの苦く辛い読書でした。今の香港デモを遡る30年前、中国の民主化運動の淵源となる天安門事件(六四事件)が起こりました。これを弾圧された側から起こしたインタビュー記録が本書ですが、人の生死を分ける極限状況が生々しく描かれています。私は本書を読んで、権力者の抱く本能的な恐怖感が苛烈な虐殺を生んだとしても、その表象的なまやかしは、虐げられた人々の魂の自由・尊厳を決して侵すことはできず、歴史はいつか公平な裁きを見せるという「希望」に賭けたいと思いました。2019/10/15
hiroizm
15
1989年6月4日(日)中国政府は、天安門広場に集まった民主化デモ隊を武力行使によって排除した。その際多くの市民が死傷、逮捕収監された。逮捕者には偶然居合わせた一般市民も含まれた。そして民主化運動に関与した中国全土の若者も、まともな裁判もなく十数年におよぶ懲役刑に処せられた。この本は人権度外視の過酷な刑務所生活を経て、現代中国の底辺を喘ぎながら生きているかつての若者達のインタビュー集。内容は重く読んでて「ひょぇぇぇ」「ぐぉぉぉ」ってな感嘆詞ばかりで、もう北斗神拳かよ!状態。2019/10/31
ののまる
13
著名学生リーダーはまだいい。一介の労働者で、民主化運動に特に関心も無かったが、軍による市民無差別虐殺を目にして、軍用車を燃やしたり、弾丸を拾っただけで、何十年も服役。日本と違い、服役とは拷問と暴行と冤罪を認めるための自白。精神を病み、やっと解放されても、中国社会は完全にお金儲けに変わっていて、「六四暴徒」など気にもかけず、煙たがられる。その日だけ義憤により関わっただけなのに、最底辺で暮らす実態。どれも胸が苦しくなる。2020/06/25
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