内容説明
“最初の生物学者”アリストテレスの天才的な着眼から今日に通じる生物学の精髄を解き明かす。哲人のセンス・オブ・ワンダーが蘇る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
トムトム
37
何もないところから観察力とヒラメキだけで生物を理解しようとする。ちょっとだけ文章がダラっと長い部分があるけれど、興味深い内容です。科学は概念。先人さんの発見した事を私たちは学校で習ってすんなり納得しているけれど、何もないところから推測するってのはすごいと思いました。今から見ればおかしなところも、じゃあゼロスタートで先入観なしに自分で考えてこの現象は何だと思う?と考えたら、アリストテレスさんのすごさが分かります。2021/04/18
Gokkey
9
アリストテレスは数多くの動物の解剖を行い、胚発生を記載した。彼はその動物の部分や出来上がり方を通して何を見たのか?それは師であるプラトンの観念論的自然観に背いた目的論的自然観だった。様々な生物の観察から見える類似と相違。これは何故生じるのか?この変化こそが彼にとってのピュシスであり、説明を要するものであった。形相因、始動因、そして目的因と名付けられた因果関係の連鎖の実態は何か?彼の時代から一変して還元論的にDNAのレベルまで生命を細分化した我々は、彼の疑問に満足な答えを与えられるだろうか?2020/01/11
ミムロ犬
7
形而上的思考と科学的視座が入り混じったアリストテレスはいやに想像をかきたてるものがあってそういった点はプラトンとは違うおもしろさがある。(『詩学』で)ギリシア悲劇に生理的な効果を見たことも同じくそういう態度に由来しているんだろうと思う。後代にはアリストテレスの生物学をめぐってお約束の大きな論争が起きるが(これには結構な頁が割かれる)、これは彼の思考様式がわりと柔軟であることにも起因してるのかもしれない。あと、先人に容赦しないアリストテレスのスタイルが良い。2020/05/18
Pezo
2
科学の古典に対する距離のとりかたって多分難しいと思うんだけど、危うい橋をうまいこと魅力たっぷりに渡ってると思う。足を踏み外してるよと思う人もいるかもしれない。2019/11/20
Go Extreme
1
エラトー書店にて: アリストテレスの生物学との遭遇 島: なぜ生物を研究しようと考えたか 人智の及ぶところ: 生き物についての知識をいったいどこから得ていたか 解剖: 驚くべき正確さの傍らに明らかな不正確さが共存 自然: ピュシスを解明する遠大な「研究プログラム」に着手 イルカのいびき: アリストテレスの分類体系・ねらい 道具: 「論証」と呼ぶ知的構造 鳥の風: 動物の各部はなぜ必要か→比較生物学と目的論 コウイカの霊魂: 生理機能とその自己制御 泡: 発生生物学 いかにして生き物に「なる」のか2022/07/08