内容説明
――サイバー麻薬王が築き上げた恐るべき犯罪帝国の全貌とは?―― それは、数億ドル規模の米オンライン薬局事業から始まった…。海を渡る北朝鮮の覚せい剤とコロンビアのコカイン、金の延べ棒がうなる香港の隠れ家、イランとの武器取引、ソマリアの傭兵軍団、フィリピンの暗殺者たち、アメリカ政府でも破れない高度な暗号化プログラム…。すべての背後で糸を引く「魔王」の正体は?〈MCU〉のルッソ兄弟がドラマ化を即決した、想像を超える犯罪ノンフィクションの新時代を告げる一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
123
ジャーナリストが、サイバー犯罪により富を築いてさらにビジネスを拡大していったル・ルーを追う。テーマとしても、話の運びとしても面白いのだが、話があちこちに飛んで散漫な印象も受ける。だが、最後の一文はいいな。してやったり感いっぱいだ。驚いたのは、ル・ルーが富を築くきっかけになったのが、インターネットでの処方箋のいらない鎮痛薬販売であり、その結果、アメリカに疾病管理予防センターが、アメリカではコカインやヘロイン中毒の死者より、鎮痛薬の過剰摂取にのる死者が多いと発表したこと。アメリカ人は薬を飲みすぎだよ。2020/01/07
星落秋風五丈原
31
インターネットは様々な可能性と危険性を広げた。アラブの春はインターネットなしには成立しなかったろうし、子供達が親の知らない所で危険に遭遇することも増えた。つまり、功罪相半ばする存在というわけだ。本編は罪に焦点を当てた実録ルポである。世界で期間をおいて別々に発生していた事件の全てに、一人の男性が関係していた。南アフリカにルーツを持つポール・ル・ルーである。彼こそがタイトルロールの魔王である。天才プログラマーだったのだから、その才能を表に出せる事業に使えばいいものを。2023/04/07
masabi
18
【概要】サイバー犯罪帝国を築いたポール・コールダー・ル・ルーを追ったノンフィクション。【感想】凄腕のプログラマーが事業を興した。エコシステムごと提供する処方箋薬を売り捌くオンライン薬局事業に始まり、武器麻薬の商人、ソマリアでのマグロ漁、果てはアフリカでのクーデター計画。裏切り者を暗殺する傭兵団。自分の子で構成したい軍団、自分の王国を築こうと女性を雇いもする。ノンフィクションなのだが、すべてが現実離れしていて神話を垣間見た気分だ。 2019/12/20
たらお
16
金儲けと幸福感はある程度までは比例するが、一定を超えると上昇しなくなる。ここで出てくるポール・ルー・ルーという男も同様に全く幸せには見えないが、闇の世界の王になろうとしたものなのか野望は底なしである。サイバー空間を使い、鎮痛薬の販売に始まり、薬物製造・売買、ソマリアでのマグロ漁、武器の売買、殺人など、一見つながりのないと思われた事件を追っていき、親玉を追い詰める後半は面白く感じる。内部潜入しないと立件できないが、親玉は完璧主義で猜疑心をもち、裏切ったら殺されるのはわかりきっている中で交渉はヒリヒリ感ある。2020/08/15
Hiroo Shimoda
15
事実は小説よりも奇なり。映画のようなエンタメ感と疾走感で推せるノンフィクション。2021/04/08