内容説明
駆け出しの小説家・物実の元に舞い込んだ初めてのファンレター。そこには、ある興味深い言葉が記されていた。「この世で一番面白い小説」。あまねく作家が目指し、手の届かないその作品のアイディアを、手紙の主は思いついたというのだ。
送り主の名は、紫と名乗る女性。物実は彼女に乞われるがまま、小説の書き方を教えていくのだが――。
鬼才・野崎まど新装版シリーズ第4弾。「小説家を育てる小説家」が遭遇する非日常を描く、ノベル・ミステリー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
68
今回は凄かった。「この世で一番面白い小説」のアイデアを持つ女性。主人公は彼女に小説の書き方を教える事になる。中盤までは女性との交流が中心に描かれていて、今回はこのまま大人しく終わるのかなと思いきや。とある人物の登場を機に、物語は一気に加速し思いもよらぬ方向に展開し始めた。思えばパイソンのギャグ兵器にしても『虐殺器官』の言語にしても言語化出来ぬものを取り扱うというのが個人的には好きなのだけど、本書の「この世で一番面白い小説」もそれに連なる一冊として、まさに途中から一気読み。なるほど、小説家の作り方か、納得。2020/06/27
オフィーリア
50
“この世で一番面白い小説”のアイデアを思い付いた。そう語る女性(変人)に小説指南を始める主人公。このテーマから思いもよらないジャンルに大回転し、物語をひっくり返してくれるのが流石の野崎まど。このシリーズはいつも想像の範囲外から私を殴り付けてくれる。2024/05/06
Shun
29
シリーズ4作目は創作についての話。主人公は駆け出しの小説家で彼の長所はキャラクターの造形にあり、そんな彼の元に初めてのファンレターが届く。手紙主によると「この世で一番面白い小説」のアイデアがあるのだが書く術を持たず、小説の作り方を教わりたいという内容で、彼を選んだのは彼の得意とするキャラ造形に注目してとのこと。そして数か月に至る小説家育成は、一番面白い小説とは如何にして作られ得るものなのか興味深い思考実験を見ているようでした。またこの小説家育成の過程は同著者の小説「タイタン」に繋がるものを感じました。2020/08/11
moto
18
やはり、こちらの作品も面白い。まさか小説家とSFが共存するとは思わなかった。それぞれのキャラの独特な会話や後半の怒涛の展開で気が付くと一気読みしていました。個人的には、在原露との掛け合いが好きでした。2019/12/09
ひみーり
15
野崎まど劇場に次ぐ2冊目、面白かった物語が猛烈に動きだす時はもちろん、それ以前でもそれなりに面白かった小ネタがきいてて。ちゃんとした作品書くんだ野崎さん、初読の作品がファンサービス的内容だったから読む順番間違えたかもしれない。新装版にして正解、読み終わってから見ると感慨深いよ。2023/12/05