内容説明
1945年、妹のローラは車ごと橋から転落して死んだ。あれは本当に事故だったのだろうか? 年老い孤独に暮らす姉アイリスは、釦工業で財をなした町いちばんの名家だった家族の歴史と姉妹の来し方を振り返っていく……。ローラの手になる小説『昏き目の暗殺者』、次々と亡くなっていく親族たちの死亡記事、そして老女の回想が織りなすある一族の波瀾の歴史。稀代の物語作家が圧倒的想像力で描くブッカー賞、ハメット賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
びす男
50
うーん。難解な小説だなと思う。入りからして推理小説かと思いきや、必ずしもそうではないらしい■なにより、小説が重層構造で進む。釦工場で財をなした一族で育った老婆の生活、その回想。「昏き目の暗殺者」のパートにも、男が紡ぐ寝物語が断片的に入る。そして意味深な新聞記事■「分からなくても、とりあえずついて行く」という、読み手の粘りが求められている。下巻で解決が見られることを期待して、ただただ手を引かれるままに、読み進めるしかない。2020/02/04
わたなべよしお
25
「侍女」に続いてのアトウッド。だが、少し読み進めるのに苦労している。この物語が読者をどこに連れて行こうとしているのか、皆目検討がつかないからだ。 下巻で圧倒的な感慨が得られるのだろうか。2019/11/25
アプネア
22
釦工業で財を成した、名家の生き残りである老女は、一族の興隆と衰退の来し方を振り返る。彼女は今、なにを感じ、なにを思うのか…。ブッカー賞、ハメット賞受賞作と気になっていたのですが、単行本の分厚さにずっと尻込みしていました。文庫化したのを機に手に取ってみたが、思ってた以上に苦戦した。老女の追憶の中に、不義密通を交わす男女の話があり。またその中にもSFめいた話がマトリョーシカのように続く。その上過去の新聞記事など、これは誰を指しているのか?何を暗喩しているのか?慣れるまでは結構かかった。下巻へ。2020/01/04
R子
14
一族の栄枯盛衰と、その中で翻弄されながら生きる姉妹の物語。姉は一族の人間として自分の期待される役目を果たそうとし、妹は自由を求める。彼女たちはこの先どこへ向かうのだろう。作中作『昏き目の暗殺者』の男女の逢い引きと、男が語る王国の因習をめぐる話も残酷ながら惹かれてしまう。ミステリーと思って読み始めると面食らうが、読み進むに従ってパズルが組みあがり、ときに忘れかけていたピースの居場所が見つかってはっとする。重厚感があって下巻も楽しみ。2020/06/11
フリウリ
8
ずっと読みたかった本なのですが、思いのほか、難渋しています。The blind assassin を昏き目の〜と訳したことに、何か意味があるのかな? 昔のストーリー、フィクション、現代のストーリーは、どうつながるのかな? とにかく後半へ。2023/07/25