講談社学術文庫<br> 天皇陵 「聖域」の歴史学

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講談社学術文庫
天皇陵 「聖域」の歴史学

  • 著者名:外池昇【著】
  • 価格 ¥1,320(本体¥1,200)
  • 講談社(2019/10発売)
  • ポイント 12pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784065173930

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内容説明

今年7月、大阪府の「百舌鳥・古市古墳群」が日本で23件目のユネスコ世界遺産に指定された。しかし、この世界遺産を構成する古墳の多くは、その被葬者さえ特定されていない。最大規模を誇る仁徳天皇陵や、履中天皇陵、允恭天皇陵などには、本当にその天皇が眠っているのだろうか。天皇陵は、いつ、どのように定められ、管理されているのか、近世・近代史を専門とする著者が、「天皇陵の歴史」と問題点を解き明かす。江戸時代中期、各地の古墳を独自に探査した蒲生君平。幕末期、尊王思想の高まりの中で、陵墓の比定と修補を願い出た宇都宮の藩主・戸田忠至。こうした近世の研究成果の上で、明治政府は、全天皇と皇族の陵墓を決定していった。神話に語られる天皇の実在を「証明」するためにも、墓の確定は欠かせなかったからである。神武天皇陵や仁徳天皇陵はどのように決められたのか、明治天皇陵はなぜ京都にあるのか、大正天皇陵の参拝に大混雑した鉄道と町、昭和初年に新たに皇統に列せられた南朝第3代の長慶天皇の陵はどう探したのか、さらに天皇陵の祭祀の場としての意味、著者が発見した資料「陵墓参考地一覧」からわかること――など、あらゆる論点から天皇陵を検証し、今後の科学的・考古学的調査の必要性を訴える。〔原本:『天皇陵論―聖域か文化財か―』 新人物往来社、2007年刊〕

目次

はじめに―天皇陵と宮内庁
第一章 創られた天皇陵
1 江戸時代の姿
2 文久の修陵
3 神武天皇陵はどこに
第二章 天皇陵決定法
1 仁徳天皇陵の探しかた
2 決定陵と未定陵
3 聖徳太子墓の謎
4 明治天皇陵の謎
5 「皇室陵墓令」と大正天皇陵
6 長慶天皇陵を探せ
第三章 天皇陵の改定・解除
1 天武・持統天皇の改定
2 豊城入彦命墓のゆくえ
第四章 天皇による祭祀
1 祭祀の真相
2 式年祭とは
第五章 もうひとつの天皇陵
1 昭和二十四年十月『陵墓参考地一覧』の発見
2 安徳天皇陵と陵墓参考地
3 陵墓参考地の断面
第六章 聖域か文化財か
1 陵墓と文化財
2 天皇陵研究法
おわりに―「聖域」としての天皇陵

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

さとうしん

15
近現代における天皇陵の位置づけをめぐる話。一部の古墳が文久の修陵の際に大幅に手を入れられているという話は、史跡の外観が不変ではないというのは海外だけでなく日本でも同じという気付きを与えてくれる。また、天皇陵と天皇による祭祀との関係について紙幅を割いているのも本書の特色である。中国とは異なり、被葬者を示すような文字資料が副葬されていないということが、天皇陵や陵墓参考地の扱いに関して宮内庁側が政治的に付け入る隙のようなものになっているのではないかと考えさせる。2020/01/04

kawasaki

9
2007年刊『天皇陵論』(新人物往来社)の文庫化。長いあとがきに、2019年刊行時までの状況(百舌鳥古市古墳群の世界遺産登録など)を付す。近世・近代史の観点から、江戸後期から近代に陵墓が「整備」された過程や、その過程でいかなる検討がされてきたか、天皇の祭祀はいかなるものかといった諸点を扱う。文化財として「開かれた」存在にした方がよいという基本スタンスながら、おざなりな管理も危惧(高松塚ショックの大きさよ)。「あり方を考えるべき」とはよく言われるが、その実際の現場の状況を窺うことができる。2019/11/01

もるーのれ

6
近世・近代史の立場からの陵墓の研究。幕末頃からの天皇陵の治定や、それに基づく古墳の形状の改変などの過程も知ることができて面白い。こうした改変は考古学の立場(特に古墳の形態に関する研究)ではなかなか認識できない所でもあるので、留意したいものである。また、情報公開請求で得られた情報を用いての陵墓の検証手法は鮮やか。陵墓として一旦指定されてしまった古墳については、現状では立入が制限されてしまっており、研究の上では大きな損失である。現在の陵墓を巡る問題点の指摘と、今後の陵墓研究への提言は傾聴に値する。2020/02/23

青雲空

6
難解ではないが、専門家向け。 天皇陵比定の出鱈目さは知っていたが、陵墓参考地のいい加減さには呆れた。 森浩一さんが提唱して、○○陵という呼称から地元名を付けた名前(大山古墳)が広まっていたのに、ユネスコ登録でまた○○陵に戻ってしまわないか危惧する。 2019/11/27

katashin86

4
カバー写真は「仁徳天皇陵とされる大山古墳」、帯紙には「本当に仁徳天皇陵なのか」とある。そもそも、記紀神話上の存在たる仁徳天皇の「本当のお墓」とは何なのか? 著者は古墳が近世から近代の尊王思想・明治国家樹立の中で天皇陵という管理をされるようになっていく歴史をずっと研究しており、僕も著作を複数拝読している。この本は仁徳陵古墳の世界遺産登録を受けての文庫再版であり、著者の幅広い天皇陵研究を1冊でまとめた内容となっている。古墳ロマンを愛する人、近代天皇制に興味をもつ人にぜひおすすめ。2020/06/22

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